コロナ禍は、非接触ビジネスを生み出すという面において、単なるきっかけに過ぎなかったかもしれません。毎日新聞のアンケート調査では、約9割の企業がコロナ後もリモートワークを継続すると回答しています。
参考:主要126社アンケート コロナ後も在宅、企業9割 国、環境整備急務に
販売業においては、オンライン接客に注目が集まっています。お客様には「実物を見て購入したい」と言う気持ちもありますが、それ以上に「コロナが怖い」、「オンラインの方が効率的」と考えられているようです。
今回は、販売業のトレンドになる可能性が高い、オンライン接客についてご紹介します。
ジュエリーとオンライン接客は相性が良い?
宝飾業界でもオンライン接客の波が、少しずつ打ち寄せています。では、ジュエリーとオンライン接客の相性とはいかほどなのでしょうか。
まず、ジュエリーなどのラグジュアリー商品の多くはオンライン接客との相性が良い傾向にあります。理由は小額商品と違い、オンラインショッピングにてワンクリックで商品を購入するには、それなりに勇気がいるからです。
「そのブランドに惚れ込んでいる」などの場合を除いては、数万円~数十万円する商品をワンクリックで購入するのは、抵抗感を示す人が大半です。
だからこそオンライン接客が効いてきます。手に取って触れることはできなくても、画面越しに360°、商品を確認できてスタッフの商品説明などを受けながら、より具体的な検討を進められます。
単にECサイトで購入するよりも安心感は格段にアップしますし、購買意欲の醸成※にも確実に貢献します。
※「購買意欲の醸成(じょうせい)」とは、企業側の施策でお客様の「買いたい」気持ちを大きくする取り組みです
また、ジュエリーは見る角度によって輝きが変わる商品なので、写真だけでなく映像によって角度を変えてみることで、商品の魅力をより伝えることが可能です。オーダーメイド・ジュエリーなど、お客様とデザイナーや職人が対面して話をしなければならない商材においても、オンライン接客なら安心・安全を保ちながら商談を進められます。
三越伊勢丹ではコロナ禍に応じて、リモートショッピング用アプリを開発しています。登録者はアプリ上で商品を購入することはもちろん、チャットやビデオ通話での接客を受けることが可能です。
参考:三越伊勢丹がオンライン接客で販路獲得に成功した「緻密な仕掛け」と利用客数10倍の道筋とは? ダイヤモンド・チェーンストア
オンライン接客のメリット
オンライン接客のメリットは、コロナ禍において店舗来店を不要にするだけでなく、「商圏範囲を広げられる」点にも注目してください。
ジュエリーなどのラグジュアリー商品は高額なために、オンラインショッピングでは買いづらいものです。過半数のお客様が実際に手に取りたいと考えているので、従来は商圏範囲を広げるのが難しいという課題がありました。
しかしオンライン接客なら、店舗来店時とまではいかずともビデオ通話などを通じた接客により、購入しやすい環境を作り出せます。すると都道府県をまたいだお客様にも商品を届けることができ、商圏範囲は確実に広がります。
ジュエリーはトレンドに左右されない商品でもあるので、国境を越えて商圏範囲を広げられる可能性もあります。
オンライン接客のデメリット
一方、デメリットとしてはオンライン接客を実現するのに機材やツールが必要になること。それと、オンライン接客のノウハウが積み上がっていないことです。
例えば、「販売員の顔も見せるか、手元だけを見せるか」という細かい判断でも印象は大きく変わります。また、お客様がビデオのオフを希望すれば、表情を見ながら接客することができません。
店舗での接客よりも難度が上がりますし、ほとんどの企業はオンライン接客に関するノウハウがないので、その点に苦戦する可能性が高いでしょう。
機材やツールに関してもコストがかかります。ただし、必ずしも三越伊勢丹のようにアプリ開発が必要なわけではありません。既存ツールを組み合わせることで導入コストをグッと抑えられます。
考え方を変えれば、業界にノウハウが積み上がっていない今だからこそ、オンライン接客を実施して先行事例として活躍することができます。ゆくゆくはオンライン接客のコンサルも視野に入れると、ビジネスの幅が広がります。
オンライン接客がコロナ禍の活路と、新しいビジネスを生み出す可能性
オンライン接客やリモートワークなど、非接触ビジネスはコロナ禍によって急速に進みました。しかし、それは単なるきっかけに過ぎず、時代がそれらを求めているという潜在ニーズが掘り起こされたと表現する方が、正しいように感じます。
いつの時代も、ピンチはチャンスになり、歴史的な改革を成し遂げるシンギュラー・ポイント(特異点)になります。宝飾業界にとってのシンギュラー・ポイントも、今かもしれません。
この機会に、オンライン接客を取り入れてみてはいかがでしょうか?