
宝石やジュエリーを売却したあと、
「後から鑑別書が見つかったらどうなる?」
「やっぱり返してほしいと言ったら戻せる?」
「査定ミスがあったと言われたら返金しないといけない?」
など、売却後に疑問や不安を感じることもあるでしょう。一度成立した取引は、基本的にはその時点で完了します。しかしその後の対応については、契約や法律の考え方によって整理される部分もあります。
今回は売却後に起こりやすい疑問についてどのように考えればよいのかを、宝飾業界の法律問題に詳しい新田弁護士に伺いました。
今回お話を伺った専門家

新田 真之介 弁護士
(三村小松法律事務所)
宝飾・ジュエリー分野に精通した弁護士。日本宝石協会理事。GIA-AJP、JJAジュエリーコーディネーター1級。
ジュエリー、時計、工芸、アート、ファッションなどのラグジュアリービジネス法務に注力している。
ジュエリー専門弁護士として「Jewelry and Law~弁護士新田真之介のジュエリー法務~」でも宝飾業界の法律問題について発信している。
弁護士に聞いた「売却後に知っておきたい契約の考え方」
買取では「売ります・買います」の合意が成立した時点で契約が成立するため、売却後に状況が変わった場合でも対応できる範囲には限りがあります。一方で、条件やケースによっては例外的な対応が取られることもあります。
今回は、売却後に多くの方が疑問に感じるケースについて伺いました。
売却した後に鑑別書が出てきました。その内容に応じて査定額を上乗せ請求することはできますか?

あくまでユーザー側の事情での「解約+再査定」という形になりますから、対応できるかはお店にまだ品物が残っているかどうか、そしてお店側の良心次第になるかと思います。一度成約した買取契約をユーザー側の事情でキャンセルしたり、上乗せ請求に応じる義務はお店側にはありません。
宝石の種類などある程度は店頭で検査できることもありますが、鑑別書があった方が「どのような処理がされているか」「処理に対する検査がされているか」などの詳細が分かります。
一般的に鑑別書がない場合、買取店側は「本物ではなかったときのリスク」を負うことになります。そのため鑑別書がないと査定額が低くなる傾向があるのです。
売却したものを返して欲しいと頼んだら「もうありません」と言われました。そんなことがあるんですか?

買取店の多くは即日、もしくは翌日にはBtoBの市場などで売って現金化するでしょうから、「もう手元にないです」と言われることは多いと思います。
一度成約している以上、お店が返品に応じる義務はありません。(ただし訪問買取などクーリング・オフの対象取引の場合は別で、その場合はクーリング・オフ期間中に、その物品を第三者に転売・処分してはならないというルールもあります)
お店が現金化を急ぐのは相場の変動があるからです。その日の相場で買取額を決めているので、長く保有していると相場からズレて損するリスクがありますよね。そのリスクを避けるためになるべく早く手放すのです。
買取後にコピー品と発覚し返金を要求されました。応じないとダメですか?
<事例>
シャネルのリングを5万円で買取してもらったが、後日「コピー商品でした。商品を返すので返金してください」と言われた。
コピーとは知らなくても返金に応じる必要がありますか?コピーと知っていて売った場合はどうなりますか?

たいていの買取店では規約などに「偽ブランド品だということが分かった場合には解約します」という条項を入れているかと思いますので、そのような契約上の根拠で解約を申し入れられる場合はあると思います。
規約に記載がない場合でも、真性品という前提で査定し買取(売買)契約をしているのであれば「契約内容に適合していない」として契約解除になることはあり得ると思います。
なお、故意にコピー商品や偽ブランド品を売った場合は詐欺などの刑事責任を問われる可能性があります。同じような手口を繰り返している場合は故意が認められやすいでしょう。
まとめ
買取は合意が成立した時点で契約として完了するため、その後に状況が変わったとしても基本的には内容を変更することは簡単ではありません。
- 売却後に鑑別書が見つかっても、後から上乗せ請求が認められるとは限らない
- 買取後の商品はすぐに流通するため手元に戻せないケースもある
- 査定ミスや契約内容によっては、返金対応が求められる場合もある
一度成立した契約を後から変えることは難しいからこそ、売却の判断は慎重に行うことが大切です。その場で納得できているか、説明に違和感がないかを確認することが後悔しない取引につながります。
未来宝飾マガジン編集部 監修
