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Carera y Carrera、スペイン王室ご用達ジュエラーの栄光と終焉

2021.11.29 2023.08.08

Carera y Carrera、スペイン王室ご用達ジュエラーの栄光と終焉

スペインの宝飾品を語る上で欠かせないブランドがあります。世界で名誉あるブランド30にも選出された、スペイン屈指の歴史を誇る宝飾ブランドCarrera y Carrera(カレライカレラ)。

 

独特なマットゴールドと古典的モチーフ、他ブランドでは見られない唯一無二の魅力は、ベルギー、スペイン王室やハリウッドセレブ達をも魅了してきました。

 

今回は日本でもファンが多いCarrera y Carreraの歴史と彼らが紡ぐ宝飾品の魅力を解説していきます。130年以上に渡る世代から世代に伝わった技法、そしてファミリーブランドの譲渡からその終焉まで、歴史のぺージを覗いていきましょう。

スペインで最も歴史のある宝飾ブランドCarrera y Carreraの歴史

サトゥリオ・エステバン・カレラよって1885年にマドリードで創業し、彼の曾孫であるマヌエルとフアンによりCarrera y Carreraというブランドが1970年代にあらたに設立されました。ジュエリー家業として発展したブランドであり、生き生きとした表情のデザインを、質感のあるゴールドで表現。

 

ここで簡単にその時系列を見ていきましょう。

1885年:サトゥリオ・エステバン・カレラにより創業
1920年:息子のホセ・エステバンがパリで宝石、研磨技術を学ぶ。自身の4人の甥達に技術を伝承
1977年:Iber Joya、バーゼルワールドへ出店
1979年:事業をアメリカに拡大
1980年:ロナルド・レーガン大統領に彫刻作品を寄贈、ホワイトハウス美術館に所蔵される
1994年:ロシアへ進出し成功を収める
2002~2006年:リヤドロが株主になる
2010年:ロシア、アメリカ、日本に子会社を設立

ジュエリーの特徴は?

まずCarrera y Carraraのジュエリーの特徴として挙げられるのが、そのマットな仕上がりのゴールドです。マットゴールド自体は珍しい技法ではありませんが、独特の質感はデザインの生命線となるモチーフに、生き生きとした息吹きを吹き込んでいます。

 

自然主義を思わせる動植物、神話をモチーフにしたロマン主義的なデザインはCarrera y Carreraでしか紡げない古典的デザインであり、ブランディング成功のトリガーになりました。

 

ここではその幾つかを紹介していきましょう。

 

・Bambu(バンブー)

東洋における幸運を呼ぶモチーフとして選ばれ、竹の持つ生き生きとした表情をマットゴールド、ダイヤモンドで表現したコンテンポラリーピース。

 

・Circulo de Fuego(シルクロ・デ・フエゴ)

権力と強さを象徴とするドラゴンをモチーフとしており、ブランド人気の起爆剤になったデザイン。

 

・Las Manos(ロス・マノス)

手先をモチーフにしており、パールや半貴石などを親指と人差し指で掴んでいる唯一無二のデザイン。Carrera y Carreraのブランドを象徴するライン。

 

・Agua(アグア)

流線形の甘い線をペイズリーモチーフとして表した、Carrera y Carreraのスタンダードデザイン。

 

・Bestiario(ベスティアリオ)

Carrera y Carreraのダイナミックさと繊細なデザインワークを感じさせるアニマルモチーフで、象や蛇、虎、などをマットゴールドで表現。特にアメリカで人気を呼んだデザイン。

 

Carrera y Carreraのデザインはクラシックを原点としながらも、東洋の文化的モチーフや時代のモードを上手くデザインに組み込むことで市場を開拓、先見の明ある経営陣の手腕の高さが伺えます。

 

ユニセックスで楽しめるジュエリーだけでなく、ダイナミックな原石を活かした彫刻作品も多く、マットゴールドとバロックパールによるイカロス(※1)をモチーフにした作品はロシアのクレムリン博物館に展示されました。

(※1)ギリシャ神話の物語で、人工のロウの翼で宙を飛びクレタ島の迷宮から脱出を図るも、高く飛び上がった際にロウが溶けてしまい、エーゲ海に墜落してしまった青年。

王室、ハリウッドに愛されたブランド

ベルギー王室

ブランドが開花するのは60年代であり、ベルギー国王ボードゥアン1世王妃であるファビオラ・デ・モラ・イ・アラゴン(Fabiola de Mora y Aragón)に結婚祝いとして贈られたティアラが、Carrera y Carrera第一のキャリアになりました。彼らが紡いだティアラは、スペイン出身である王妃の望郷の念を呼び起こしたのでしょうね。

 

なおこのフランシスコ・フランコから贈られたダイヤモンドティアラの宝石はエメラルド、ルビーに交換できる画期的なものでした。しかしこのティアラは購入前に修道院が所蔵しており、その際に修道女により全ての宝石は売却され、ティアラにあるべき宝石はクリスタルガラスに組み替えられていた事実が後に判明し、Carrera y Carreraが交換するという珍事も伝わっています。

 

このような紆余曲折もありましたが、積極的な見本市への参加とデザイン開拓により、国内外のブランディングは大成功を収めますが、その裏にはフアンとマヌエルによる尽力なしでは語れません。

 

なおCirculos de Fuegos 、Aqua、Animalデザインは海外の富裕層に爆発的な人気を呼びおこし、Lady GagaやKaty Perry、Jeniffer Lopezなども熱心なブランド信奉者として知られています。

Carrera y Carrera、ブランドの終焉とスペイン王妃のティアラ

1885年創業という老舗家業であるCarrera y Carrera、日本でもそのラグジュアリーな古典モチーフが人気を呼びましたが、残念なことに2018年に経営破綻しブランドとしての歴史を終えることになるのです。

 

破産を迎えた歴史的宝飾店の最後

破産を迎えた歴史的宝飾店の最後

意外と知られていませんが、スペイン本国においてCarrera y Carreraは2018年に全ての店舗を畳み、破産をしており、その店舗の営業を終了。ジュエリーを家業としてきた歴史的なジュエラーが同じ道を歩むように、Carrera y Carreraも伝統を守りながらも、所有者が変わり2006年にはバレンシアの陶器メーカーリヤドロがその株を100%購入。

 

その後リヤドロはロシア人投資家によるsociedad Caruli Limitedへ株を売却するも、度重なるオーナーの変更、膨らむ債務とスペイン経済の停滞による売れ行き不振などが重なり、ブランドとしての歴史に幕を降ろすことになるのでした。

 

なお日本法人に関しても数年遅れで破産宣告をしており、現在本家のWEBページも観覧が出来なくなってしまいました。

 

レティシア王妃の王冠の行方

日本に来日する度、そのファッションセンスに美貌でお茶の間の話題をさらうレティシア王妃。そんなレティシア王妃ですが、彼女がCarrera y Carreraのブランド存続の鍵を握っていたかもしれないという噂をご存知でしょうか?

 

それは彼女がまだ結婚する前に遡ります。若き日のフェリペ皇太子は彼女にCarrera y Carreraの豪奢なイエローゴールドのティアラを贈りました。ブランドが説明しているデザインは、以下のようなものです。

 

・フィリグリー様の金細工で植物文様をイメージ
・25石のダイヤモンドを使用
・上部に5つの涙型のパールがセット

 

実際レティシア王妃はこの豪華なプレゼントを贈られてから、一度も公の場でCarrera y Carreraのティアラを身に着けませんでした。たらればになりますが、もし王妃が古豪の宝飾ブランド危機の際に、一度でもこのティアラを身に着けていれば、ブランドが辿る運命は違っていたかもしれませんね。

 

なおレティシア王妃に贈られたものと同様のバージョンで、パールが付属していないティアラはブルガリアのカルダム王子未亡人であるミリアム・ウングリアに贈られ、実際にあるコンサートで着用され日の目を見ることができたそうです。

今後のCarrera y Carreraの評価は?

現在Carrera y Carreraのジュエリーは、ショーウインドーに並んでいる在庫のみ。このブランドはスペイン国内でもいわゆるピハ(お金持ちの人)と呼ばれる上層階級の婦人向けであり、一般層に届くラインではない為、本国スペインでも中古品としての取り扱いは多くありません。

 

元々金という素材をベースにダイナミックな造形美を作り出してきたブランドなので、その市場価値は金の相場と共に少しづつ上昇しています。

 

特にエンジェルやハンドモチーフなどの身に着けやすいデザインから、たっぷりのゴールドと色石を使ったファインジュエリーと言える高級ラインは、代替品が見つからない宝飾品として今後も評価、価値は高まることでしょう。

まとめ

Carrera y Carreraに関するまとめ

Carrera y Carreraに関する特徴をまとめると、

  • 1885年創業の老舗スペイン宝飾ブランドである
  • 門外不出のマットゴールドと古典的モチーフで人気を博す
  • スペイン、ベルギーをはじめとする王室に愛され、ハリウッドにも顧客を抱える
  • 2018年に破産し、ブランドとしての歴史に幕を下ろす

他のブランドにはないモチーフとマットゴールドによるジュエリーは、宝飾品という域を超え、身に着ける芸術作品としての面が強いかもしれません。

 

知れば知るほど、その魅力が伝わる玄人向けの宝飾ブランドCarrera y Carrera、その長い歴史は残念ながら閉じてしまいましたが、130年以上に渡り製作されたジュエリーは今も人々に愛され続け、いつかそのブランドの復興をと叶わぬ夢を願う人々は後を絶ちません。

 

 


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