お客様の心の動きと購買行動は密接に関係しています。そにあたりお客様の心を鷲掴みにするような心理学です。「心理学」というと専門家が駆使する対人スキルのように考えれらを心理学の観点から見つめると、色々と面白いことが判明します。
本記事でご紹介するのは、接客・販売がちですが、ちょっとした知識を付けるだけで実践できるものもあります。今回は数ある心理学の中から厳選に厳選を重ね、実戦で使いやすい心理学をピックアップしてみました。
お客様に好意を抱いてもらう「ラポール・テクニック」
ラポール(Rapport)はフランス語を語源とした言葉で「信頼関係」を意味します。心理学的には「一致・調和の取れた状態」を指し、接客・販売の場面では販売員がお客様の細かい行動に合わせ、互いに調和の取れている状態です。
行動心理学(仕草から本音を知る学問)では「同調行動」と呼ばれる考え方があり、これは周囲の意見や行動に合わせて自身も行動してしまうことを指します。要するに、人は周囲と同じことをしていると安心感を覚えるのです。これを利用したのがラポール・テクニックであり、販売員はお客様の行動をつぶさに観察しながら、自分の行動を同調させます。
例えば、次のような行動に。
- 会話のテンポを合わせる
- 声のトーンと抑揚を合わせる
- お客様の目線に合わせる
- 表情を合わせる
- 相槌の仕方を合わせる
- 使う言葉を合わせる
- 呼吸を合わせる
これ以外にも合わせられる所があれば、どんどん同調してみてください。お客様はその行動を見て無意識のレベルに安心感を覚え、警戒心を解き、信頼が得られやすくなります。数ある心理学の中でも特別なテクニックを必要としないので、比較的取り入れやすいでしょう。
「傾聴」でより深い信頼関係を築く
お客様と会話する中で、販売員はどれくらいの割合で発言するのがベストなのか?実は、「ほとんど話す必要はない」のが正解です。なぜなら、人間は会話している相手に対して「自分の話を真剣に聞いてくれている」と感じた時、深い信頼が芽生えるようになります。もちろん商品をお勧めしたりお客様の要望を叶えるためには販売員の発言も必要なので、会話全体を100%として15〜20%程度の発言に留めておきます。
それ以外の時間は、とにかくお客様の話に「傾聴」するのです。その際は、以下の点を意識しながら話に耳を傾けてみてください。
- お客様が話すことにしっかりと想像を働かせる
- リアクションをしっかり取る
- 絶対に「なるほど」と言わない
- 質問と傾聴を繰り返す
- 話を遮らず、否定しない
- 意見を述べない
この中で一番意識すべきなのが「なるほど」を言わないことです。人は「あなたの話を聞いていますよ」という意思表示として「なるほど」と言いがちですが、この言葉は相手には話を聞き流しているように感じ取れます。それよりも、お客様が話していることに対して深く頷いたり、表情だけでリアクションを取ったりする方が、「ちゃんと話を聞いてくれている」と感じられるものです。
上述したラポール・テクニックと合わせて傾聴のテクニックを活用することで、お客様とより深い信頼関係が築けるようになります。
「メタモデル」でお客様の意図を汲み取る
「脳と心の取扱説明書」とも呼ばれるNLP(神経言語プログラミング)の中には、メタモデルと呼ばれる心理学的テクニックがあります。これはNLP開発者が3人の天才セラピストを分析する中で導き出したスキルパターンであり、メタモデルを活用するとコミュニケーションのすれ違いを防ぎ、お客様が伝えたいことをしっかりと理解できるようになります。
人は会話の中で得られる情報を、自身の都合の良いように脚色・歪曲してしまうことが多々あります。つまり大概の会話では、欠陥だらけの情報の元で話が進んでいるのです。夫婦や友人など深い信頼関係が築けている場合で問題になることは少ないですが、お客様と販売員という関係性では大問題です。
例えば、次の2つの会話を比べてみてください。
■ パターン1
販売員「いらっしゃいませ」
お客様「今度友人の結婚式があるんだけど、可愛らしいデザインで控えめなのってないかしら?そこそこ安いのがいいかな」
販売員「それでしたら、こちらはいかがでしょうか?」
お客様「うーん、イメージと違うわね。ありがとう。他を探してみます」
■ パターン2
販売員「いらっしゃいませ」
お客様「今度友人の結婚式があるんだけど、可愛らしいデザインで控えめなのってないかしら?そこそこ安いのがいいかな」
販売員「結婚式はいつ頃でしょうか?控えめとのことなので、素材はホワイトゴールドやプラチナがよろしいですか?」
お客様「そうね。ただ地味過ぎるのは嫌だから、ダイヤなんかを少しあしらった物がいいかな」
販売員「かしこまりました。ちなみにですが、ご予算はおいくらほどでお考えですか?」
お客様「うーん。10万円そこそこってとこかな」
販売員「それでしたら、こちらとこちらはいかがでしょうか?」
お客様「いい感じね。他にもあるの?」
販売員「もちろんございます。それではお掛けになってお待ちください」
パターン1ではお客様の「可愛らしいデザイン」「控えめ」「そこそこ安い」という大まかな情報から販売員が細かいところまで勝手に想像し、商品を提案してしまっています。一方パターン2では細い条件まで聞き取れているので、お客様の要望に合った商品を提案できています。
メタモデルは「いつ」「どこで」「誰が」「なぜ」「どのように」「いくらで」という5W1Hの情報をしっかりと押さえるだけで扱えるテクニックなので、ぜひ活用してみてください。
お客様との信頼関係こそトップ販売員の証
今回は3つの心理学テクニックを厳選し、お届けしました。どれも日常の接客・販売の中で取り入れやすいものなので、まずは1つ試してみてください。
また、これら3つの心理学テクニックは販売員として「当たり前のこと」と考えた方も多いでしょう。しかし、それらを当たり前のようにできるかどうかが、お客様との信頼関係を大きく変化させます。これを機に、日頃の接客を見つめ直してみましょう。