ジェムショーで人気を博し、某テレビの影響で人気を不動のものにしたパライバトルマリン。ブラジル産以外にもアフリカ産も登場した為、産地鑑別に注目が集まりますが、今回はその見分け方と鑑別方法を解説していきます。
パライバトルマリンとは?特徴と産地
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パライバトルマリンと言えば、「ネオンブルー」の色相が特徴。ブラジルのパライバ州から始まり、現在までにアフリカ発のパライバトルマリンも登場し、市場ではアフリカ産の石を「パライバ認定」していいものなのか、「ブラジル産との相違」は何なのか?が大きな議論に……。
2010年にはLMHC(※1)によりアフリカ産の石もパライバトルマリンと認定され、近年は産地特定の鑑別も可能になりました。ここではパライバトルマリンの特徴を解説していきながら、その鑑別方法を考察していきます。
(※1)ラボマニュアル調整委員会のこと。宝石レポートの用語の検討や調整をする組織。
―パライバトルマリン特徴―
鉱物名 | トルマリン(Tourmaline) |
---|---|
化学組成(エルバイト種) | Na(Li1.5,Al1.5)Al6(Si6O18)(BO3)3(OH)3OH |
結晶系 | 三方晶系 |
モース硬度 | 7.0~7.5 |
劈開 | なし |
比重 | 3.0~3.25 |
屈折率 | 1.622 ~1.641 |
複屈折率 | 0.018 ~0.020 |
多色性 | あり |
パライバトルマリンの特徴
トルマリンはケイ酸塩からなる鉱物グループであり単独の宝石ではありません。含有微量元素の種類により10以上の鉱物に区分されます。最も評価が高い鉱物が、1989年に発見されジェムショーで注目を集めたパライバトルマリンです。
パライバトルマリンはブルー、グリーンブルー、オリーブグリーン、黄色を帯びたグリーンなど幅広い色相を呈し、色合いの違いはあれど銅イオン、マンガンイオンを含有するトルマリンのことです。銅イオンを含まない鉄、チタン由来の青、緑色のトルマリンは、パライバ認定されません。
産地間でも異なりますが、基本的に銅イオンの濃度が高くなると青色が強くなり、マンガンが多量に含有する場合は緑色系を呈するようになります。
パライバトルマリンの大部分はエルバイトと呼ばれる鉱物ですが、2010年にはスイスのギュベリン宝石研究所によりリディコータイト種によるパライバトルマリンも発見されます。
なおパライバトルマリンは審美性向上の為に加熱処理が行われることが多く、これは鑑別の際に見分けることは困難です。
パライバトルマリンの産地
パライバトルマリンが産出する鉱山は限られ、閉山したものを含めてブラジルのパライバ州、リオグランデ・ド・ノルテ州、2001年に彗星の如く市場に現れたナイジェリア産、そして2005年には比較的品質の良いモザンビーク産が登場しました。
ブラジルのパライバ州(バターリャ鉱山など)、リオグランデ・ド・ノルテ州から産出されるものは銅濃度が高く、私達が思い浮かべるザ・ネオンブルーの石が主流です。ナイジェリア産のものは彩度が低いもののカラーバリエーションが豊富で、モザンビーク産は比較的ブラジル産に似た色合いの特徴がありますが、市場では圧倒的にブラジル産が高値で取引されています。
ナイジェリア産パライバ事件簿とは?
ナイジェリア産のパライバトルマリンにプチスキャンダルが勃発したのをご存知でしょうか?
ナイジェリア産のトルマリンにも銅由来の発色があるものの、ブラジル産と比べると若干色合いが淡い為、「パライバ様の」だとか「銅含有」トルマリンと呼ばれました。さてそんなナイジェリア産のパライバトルマリンですが、登場して間もなくして、ナイジェリア産がブラジル産パライバトルマリンとミックスされ市場に出てしまったのです。
その後モザンビーク産のパライバトルマリンが登場したことで、各々の石の産地鑑別論争に火を付ける出来事になるのでした。
パライバトルマリンの産地鑑別
従来パライバトルマリンは産地鑑別されず、銅含有によるエルバイト、リディコータイト種のトルマリンをパライバトルマリンとして認定してきました。
鑑別機関においてスタンダードな手法での産地鑑別は不可能ですが、近年鑑別技術向上とその組成を分析することで産地別のグループ化に成功しました。
鑑別機関による成分分析で産地鑑別可能!
パライバトルマリンのおおよその産地鑑別は、産地間の含有元素分布をプロットすることで、LA-ICP-MS(※2)分析などで可能になりました。
(※2)レーザアブレーションICP質量分析のこと。レーザーを用いた質量分析装置で微量元素も測定が可能。
蛍光X線分析などで分かる成分分析だけでは、銅濃度が高いアフリカ産、逆に銅濃度が低いブラジル産を誤って鑑別する可能性が排除できませんが、各元素の組成と濃度を詳細に分析しプロット化することで大まかな産地を鑑別できるようになります。
例えば、ナイジェリア産の石はガリウム、ゲルマニウム、鉛が豊富ですが、ブラジル産はマグネシウム、亜鉛、アンチモンをより多く含有します。
ただし産地鑑別には高度な鑑別機器が必要であること、宝飾品加工されたものなどは、産地鑑別検査ができないこともしばしば。また分析の結果、詳細の産地が見分けられない場合もあり、現在も発展途上の段階です。
今のところCGL、GIAなどがパライバトルマリンの産地鑑別サービスを行っていますが、必ずしも明確な産地が判明するとは限りません。
まとめ
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パライバトルマリンの特徴をまとめると以下のようになります。
- ブラジルのパライバ州、リオグランデ・ド・ノルテ州から産出されるものは彩度が彩度が高く、高値で取り引きされる
- 通常、産地鑑別はされず、銅とマンガンを有していればパライバ判定される
- 近年の高度な分析技術により産地鑑別が可能になった
- 分析には「LA-ICP-MS」というレーザーを用いた質量分析装置を使用する
- CGLやGIAなどで鑑別可能だが、明確な産地が判明するとは限らない
パライバトルマリンの成分分析は極々ありふれた分析ですが、産地を特定するには不十分です。しかしLA–ICP–MSなどの高度な分析技術を用いることで、宝石の微量元素の種類と濃度、組合せを検出できるようになり、原産地特定に大きく寄与しています。
産地特定が困難な為、従来からザックリ銅とマンガンを有していれば、オールパライバ判定されてきましたが、今後より多くの機関でパライバトルマリンの産地鑑別が可能になることが予想されます。が、同時に新しい鉱山によるパライバと思しき石が混ざらないことも切に願わずにいられません。
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