フランスの随筆家、ジョセフ・ジュベールはトゥールーズ大学の教授を務めていた際、論文を発表することは1度もありませんでした。代わりに膨大な字数とファイルに、人間の存在的性質についてまとめています。彼の死後、それらの随筆は出版に至り、現在でも多くの人に愛されています。
その随筆の中に、「知識がなくても想像力を持っている人間は、足がないのに翼を持っているようなものだ」という言葉あります。過去の偉人たちは、「想像力こそ人間が持ち得る最大の力」というような言葉を数多く残しています。
接客も同様。想像力こそ、売れる接客スキルを作り出す最大の武器です。接客における「想像力」とは果たして何か?今回はそれをご紹介します。
接客の基本は「お客様が何を求めているか?」を想像すること
人は想像力を働かせることで不可能と思われる難題もやってのけます。一方で、想像力の欠如によって人生を棒に振ることすらあるのです。
接客の基本とは何かを、改めて考えてみましょう。商品知識を身につけて、それをお客様に披露することでしょうか?あるいは、単なるお会計係をいうのでしょうか?どちらも違いますね。接客の基本は「お客様が何を求めているのか?」を常に考え、お客様にとって最善の提案をし、最高の体験を提供しながら店舗の売り上げを確保していく。
お客様のことをとことん考えることと、店舗の売り上げを意識することは、一見して相反するように思えます。ただし想像力を存分に働かせれば、これらの両立は可能です。基本に立ち戻ってみると、販売員が想像力を持つことは至極当然のことであり、しかし疎かにしがちな部分でもあります。
想像力がもたらす様々な好影響
接客において想像力を働かせることで、どのような好影響が生まれるかを考えてみましょう。
①お客様の視点に立って考えられる
接客中に想像力を働かせるということは、「このお客様は今何を考えているのか?」を推察するということです。そんなこと自分には分かりっこないと思うかもしれません。しかしそれは、販売員としての仕事を放棄しているも同然です。
- お客様がどの商品を見ているのか?
- 来店時にどのような格好をしているのか?
- 同伴者はどんな人なのか?
- ゆっくり見ているか?急いで見ているか?
これらのデータを集めて分析するだけでも、お客様が何を考えているのかを推察できます。もちろんお客様自身に尋ねるわけではないので、推察の域を出ませんが、こうしたお客様の視点に立って考えることは接客のスタートラインだと言えます。
②自身の接客を見直すきっかけになる
想像力は自分自身を見直すことにも繋がります。接客後の時間がある時に、「今の自分はお客様から見てどのように感じたか?」を考えてみてください。よく接客に失敗した時は必ず見直すようにと教わりますが、何より想像して欲しいのは「接客が成功した時の自分はどうだったか?」です。例えば、次のようなことを思い返したり、メモ書きしたりして接客を振り返ってみましょう。
- 接客の始まりとなった「最初の言葉」は何だったか?
- 購入の「決め手になった言葉」は何だったか?
- お客様との距離感はどれくらいだったか?
- お客様の趣味趣向はどのようなものだったか?
- 接客に対するお客様の反応はどうだったか?
- 単純に商品を気に入っての購入(ラッキーパンチ)だったか?
失敗を反省し、次に繋げることは大切です。それよりも大切なことは、成功の要因を分析して、自分の自身の勝利法則を導き出すことです。接客スキルに優れている販売員というのは経験分析によって、独自の勝利法則を持っています。ただしこれは三者三様なので、想像力を常に働かせて自分自身で導き出さなければなりません。
③リピーター獲得に繋がりやすい
想像力を働かせた接客というのは、必ずお客様に伝わります。「この販売員は、私のことを第一に考え提案してくれている」とお客様が感じれば、悪い気はしません。むしろ信頼感すら生まれるでしょう。そうしたお客様は往々にしてリピーターになってくれ、長期間に渡って店舗に貢献してくれる存在になるでしょう。
初めての接客で商品を購入しなかったお客様の中にも、同様に感じとられ購入の意思が少しでもあれば、いずれまた訪れます。その時も想像力を働かせながら接客すればお客様に安心感を与え、必ずや購入に繋がるはずです。
④考える力が自然と養われる
よく「考えながら行動しろ」と人は言いますが、それは想像力を働かせることでしか養われないスキルです。接客に関わらずあらゆるビジネス・私生活において大切な考える力は、お客様や自分自身について想像力を常に働かせれば、自然と身についていきます。
小さく始めて、大きく広げていく
「想像が苦手」という方は、どんなに小さくても良いのでできることから始めましょう。最初から完璧にこなせる人などいません。今は輝いている販売員も、過去には必死にもがく時代があったはずです。それを人前に出していないだけ。
「このお客様は何を考えているのだろうか?」と漠然にでも構わないので考えてみましょう。最終的に、自身の推測とお客様の考えはどれくらい合っていたのかを考え、徐々にその精度を上げていくのです。想像力こそ、あなたの接客スキルを左右する最大の武器となり、接客を今よりもっと楽しくする材料にもなるでしょう。