ビジネスシーンでは消費者向けか企業向けかに関わらず、毎日のように「顧客満足度」を耳にします。商品やサービスに対して顧客がどれくらい満足しているか?を表したもの、と解釈している方が多いでしょう。
おおよそ正解ですが、それでは顧客満足度の本質を捉えられません。今回は、日常でよく口にするが実は理解できていない顧客満足度について解説します。
改めて考える、「顧客満足度」とは?
顧客満足度は「期待値」と「体験値」のバランスによって生まれる、顧客の心に蓄積されたエクスペリエンス(体感)です。
- 期待値 = 商品・サービスに対して期待していること
- 体験値 = 商品・サービスを実際に利用して得た体験
簡単に説明すると、期待値を体験値が超えることで顧客満足度は向上します。逆に超えられないと不満として蓄積され、期待値と体験値が1:1なら「予想通り」で落ち着きます。つまり、顧客満足度を向上させるには期待値を体験値が上回るように商品・サービスを設計するのがポイントです。
ディズニーランド・シー内を歩いていて、落ちているゴミを見かけないのはカストーディアルと呼ばれる清掃員が至る所に配置されているためです。
よくよく考えてみると、「園内を綺麗に保つ」はテーマパーク運営においてごく当たり前のことです。しかし、ディズニーランド・シーはそれを徹底することで、他テーマパークとの相対比較によって生まれた期待値を上回るような体験値を生み出しています。これも顧客満足度向上に繋がる一要因です。
「顧客満足度」を高めるポイント
それでは、顧客満足度を高めるには何から取り組めばよいのか?4つのポイントで解説します。
商品・サービスに対する期待値を調査
自社商品・サービス、あるいは同市場に対して顧客が抱いている期待値とは何か?これは単に「期待するメリット」だけでなく、市場全体において「当たり前」と考えられている点にも着目します。
先ほどの例で言うと、大半のテーマパークでは「掃除に手が回らず、多少ゴミが落ちているのは当たり前」そいう市場先入観があります。これが顧客の期待値にそのまま反映するので、ディズニーランド・シーは「とにかく掃除を徹底する」のたった一つの行動だけでも、顧客満足度を高めています。
期待値を知ると、大きな労力を使わずして顧客満足度を高めるチャンスです。
商品・サービスの体験値を客観的に把握
実際に、自社商品・サービスは顧客に対してどのような体験を与えられているかを調査します。よく使われるのがNPS(ネット・プロモーター・スコア)と呼ばれる手法です。
「この商品を家族や友人、同僚に進める可能性はどれくらいありますか?」の質問に対し、0~10の11段階で回答してもらいます。さらに、0~6を批判者、7・8を中立者、9・10を推奨者として扱い、推奨者の割合から批判者の割合を引くとNPSを算出できます。
NPSは業績との相関が強いと言われており、NPSの高さで顧客に与えている体験値を測定できます。また、その理由まで聞けるとより客観的な情報把握が可能です。
機能価値と感情価値を整理する
機能価値は商品・サービスが持つ機能そのものの価値です。一方、感情価値は商品・サービスが顧客の感情に与える影響と言えます。
自社商品・サービスの価値を2つに分類し、整理すると顧客が何に価値を感じているのか?をより詳しく知ることができます。また、機能価値と感情価値は企業視点で捉えるのではなく、顧客視点に立って考えるのが大切。
これらの価値基準を整理した上で、顧客が期待する以上のものを提供できれば顧客満足度は確実にアップします。
体験をデザインするという視点を入れる
CS(カスタマー・エクスペリエンス)をよく聞くように、ビジネスに「顧客の体験」という視点を取り入れるのは重要です。
従来は商品・サービスを提供して終わりであり、顧客が得る体験まで考慮されていませんでした。しかし今では、商品・サービスを通じて顧客が得た体験にフォーカスし、その体験を如何にして優れものにするかがビジネスの成否を分けます。
例えば、ネスレ日本が提供するコーヒーサーバーレンタルサービスのネスカフェアンバサダーでは、「コーヒーと、ほっとする一息」という機能価値と感情価値を提供するだけでなく、「あなたの職場に笑顔とくつろぎの場を」という体験を提供することをコンセプトにしています。
こうして「体験をデザインする」視点から商品・サービスを提供することが、これからの顧客満足度向上にとって重要です。
顧客満足度はシンプルだけど奥が深い
いかがですか?今まで知らなかった顧客満足度について、少し深めに理解できたのではないかと思います。顧客満足度はどんな商品・サービス、そしてビジネスにおいても大切な要素です。言葉通りの意味で捉えるのではなく、「顧客満足度の本質とは何か?」を理解しようとすることで、顧客満足度向上に向けてより一層効果的な施策を考えられるでしょう。