10月の誕生石として知られるオパールは、七色に輝く遊色が見る者を魅了します。他の色石とは異なる神秘的な光学現象を見せるオパールは私達日本人にとっても馴染みの深い、見る角度によって様々な表情を覗かせる宝石です。
オパールは長い歴史のなかで様々な言い伝えが囁かれてきました。今回は詩人に愛されたオパールの魅力と、その美しさとは裏腹の不吉な伝承で彩られたオパールの真偽について解説していきます。
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オパールが詩人、芸術家に愛された本当の理由
オパールの特徴として挙げられるのは、虹色に輝く光の乱反射。まるでシャボン玉のような七色のプリズムを見せる宝石。
オパールブーム(※1)を経験した日本人にとっても慣れ親しんだ宝石ですが、この宝石は多くの芸術家達を虜にしたことでも知られています。
(※1)60〜70年代のファイヤーオパールブーム、また80年代後半〜90年代のバブル期にも多くのオパールが輸入され人気を博しました。
オパールが詩人、文人に愛された訳
オパールにはダイヤモンドのようなブリリアンシー、ファイヤーはありません。しかし宝石の中にエメラルド、ルビー、トパーズなどを閉じ込めたような輝きを放ち、幻想的な姿を私達に見せてくれます。
映り行く季節のように、覗き込む角度を変えれば違う景色が見えるオパールは、時代を問わず多くの芸術家に愛されてきました。
特に言葉を紡ぐ詩人が強い関心と賞賛を寄せ、多くの作家がオパールにインスピレーションを受けています。
その理由として考えられるのが、オパールが持つ遊色が変わりゆく人々の感情を思わせること、その低い硬度(モース硬度5.0~6.5)が人生の儚さや柔らかな心の部分にリンクするからだと考えられています。
とめどなく続く人生の中で出会う様々な感情、それをオパールの遊色に重ねたのです。
詩人、劇作家が残したオパールへの賞賛の言葉
前述の通り、オパールは古代から人々を魅了する宝石として知られていました。当時は遊色がケイ酸粒子の配列による乱反射で起こることは知られていませんでしたが、一般的に喜びの石として扱われてきました。
神秘の宝石オパールに見せられた作家の中でも、19世紀イギリスの評論家ラスキンは「全ての鉱物の中で最も美しい」と評価しています。その他オパールへの賞賛の言葉としては、揺れる炎が赤色宝石と並ぶ美しさという意味で赤い宝石の総称である「カーバンクル」、「漣に揺れる海の光景と空の色を持つ」など、宝石に対する賞賛としては最高級の言葉が贈られています。
ここではさらに二人の稀代の文人の言葉を拝借し、オパールがいかに彼らの想像力を掻き立てたのかを考察していきます。
ボードレール
~Takes in his hollowed hand this gem, shot through,
Like an opal stone, with gleams of every hue,
And in his heart’s depths hides it from the sun.~
(まるで虹色を思わすこのオパールを窪んだ彼の手に掲げれば、太陽の目が届かぬ場所に彼の心の奥底を隠す。)
部分的な抜粋ですが、ここでは擬人化された月が主人公。眠りにつこうとしている女性(月)を軽やかに、そしてロマンチズムを持った言葉の韻で物憂いの様子を表現しています。
無気力で蒼白い幻影、月が涙を流すその姿を、オパールに例えています。ペールブルー、レインボーに輝くオパールの様子が、ロマン派の作品にはちょうどいい塩梅で形容されていますね。
元がフランス語なので英語、日本語に訳した時の言葉選びは訳者によっても若干異なりますが、オパールの幻想的で儚い美しさを上手く表現した作品の代表例でしょう。
フランスの詩人はネガティブな涙をオパールという宝石の特質を持って、読む者の感情を捉えることに成功しました。
シェイクスピア
~Now, the melancholy god protect thee; and the tailor make thy doublet of changeable taffeta, for thy mind is a very opal.~
(さて、憂鬱な神があなたを守り、仕立て屋はあなたにレーヨン織りの上着を作ってくれることでしょう。あなたの心はまるで移り気が酷いオパールみたいなものなんですから。)
オパールの変幻自在な魅力はイギリスが生んだ劇作家シェイクスピア作品にも見られます。
オパールは病気を患うとその輝きを失い、一方で健康な時はより一層美しく輝くといった毒や病を察知する宝石として知られたり、眼病を治癒する効能があると考えられていました。(眼の病気を癒すイコール持ち主の姿を隠すと信じられ、盗賊たちにとっては透明人間になりえることは好都合であり盗っ人愛用の宝石だったそうです。)
しかしシェイクスピアは当時流布していたオパールの怪しげな効能に着目するのではなく、あくまでオパールの遊色を「移り気」として文学的に表現しています。
オパールは本当に縁起の悪い宝石なのか?
オパールの宝石としての特質をロマンティックに韻を踏み文学作品に利用すること、それは詩的作品にとって表現の幅を広げることに大きく寄与しています。
しかしオパールはその儚げな美しさであったりメランコリックな印象だけではなく、不吉なイメージも宝石史の中で伝わっていることは興味深い点です。
ここではオパールが持つと言われた、不可思議で人々を恐れさせた伝説にスポットライトを当ててみましょう。
オパールが恐れられた訳を検証
皆さんの中にはオパールは「不吉な石」だという噂を聞いたことがある方はいるかもしれませんね。どちらかというと前述の眼の石だとか健康を維持するという伝説よりも、オパールが持つ陰気な俗信の方が知られているかもしれません。
19世紀のスコットランドから広まったと呼ばれる「オパールの不吉な石説」ですが、なぜ不気味な噂が欧州を駆け巡ることになったのかを考察すると、次のような点が挙げられます。
- 温度や湿度でオパールの外観が変化を受けるため
- 遊色効果が負の魔力と捉えられた
- 低い硬度がゆえに割れやすいため
- 涙のシンボルであり憂いや悲しみに変換された
- 眼と関連する効能が邪眼と結びついた
理由の多くはオパールの鉱物学的な特質によるもので、それがネガティブに捉えられた結果だと言えるでしょう。そしてオパールの印象や過去の伝承が独り歩きすることで、異なる解釈を持つようになったと考えられます。
ただし実際は欧州の鉱山(ハンガリー)で採掘されたオパールが富と産業を発展させたこと、またイギリスのヴィクトリア女王、アルバート王配(※2)がオパールを愛したことなどから、一概にオパールの人気が否定されたわけではありませんでした。
(※2)一般的に女王の配偶者に与えられる称号のこと。
また、ヨーロッパの女性陣は「美しい金髪を保つためには、一種のタリスマン(お守り)としてオパールを身に着けるのが有効」と信じており、不幸よりも金髪維持に奔走したのかもしれませんね。
まとめ
- 多くの詩人に愛され作風を彩るインスピレーションを与えた
- 健康維持、眼病の石などとして重宝された時代もあった
- 19世紀にはオパールが不幸の宝石として恐れられた
- オパールの鉱物学的な特質がネガティブに捉えられ「不吉な石」としてのイメージが広がった
私達はオパールの不思議な遊色にロマンを抱きますが、過去の人々はその唯一無二の色合いと変化する特性を恐怖であったり、もしくは映り気を示すネガティブな意味に捉えたのかもしれませんね。
もちろん、国や時代によってオパールの評価が異なるのは当然のこと。角度によって異なる魅力を見せるように、持つ人間によって十人十色の価値観を覗かせる宝石オパール。
皆さんはこの宝石にどんなイメージを投影し、愛でていますか?
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