![ダイヤモンドにエメラルド、宝石に隠された薬効の真偽に迫る!](https://www.miraihoushoku-market.com/wp-content/uploads/2021/09/necklace-2405165_1280.jpg)
「メディチ家が、ダイヤモンドの毒で宿敵を暗殺していた!?」
美しい宝石にはいわくつきの由来、伝説に彩られた医薬面での効能、伝承があることはあまり知られていません。単なる言い伝えだと無視はできない数々のミステリー、興味と好奇心の扉を開く、そんな宝石の異なる側面を見てきましょう。
マッサージにクォーツの一種が利用されたり、その磁性を利用してヘマタイトをネックレスとして身に着ける、また石の内なるパワーを開運に利用するパワーストーンなど、宝石が持つ力は私達にとっても身近なものです。
今回はそんな石の力の原点として伝わる、医薬効能や伝承を検証していきます。荒唐無稽で呪術的な言い伝えも少なくありませんが、人類と宝石の切っては切れない深い関係を迷信と片づけてしまうのは早すぎるかもしれませんよ?
宝石の医薬のルーツを探る旅
宝石として愛される希少性、美しさ、硬度が伴う石であれば、医者いらずの医薬効能や特性を見せるようになります。
宝石の効能に関しては、多角的な理論や空想によるアプローチが存在していますが、ここではザックリと主要なものを導入として解説していきます。
4つの元素説
四元素(※1)である「土・気・水・火」を基礎として、石が存在する為のベースの元素が霊魂を持つことで魔力に繋がるとも考えられます。
(※1)古代ギリシャで提唱された世界を構築する「火・土・水・風」の4要素。
星の動き
石が生じる地質、大きな目線で土を作り天体を回す神秘、カードで人の人生を占うように、星の動きが石にある種の作用を生むと考えることもできます。
石の構成成分
宝石を一つの混合物質と考えると、ハーブがその化学的アプローチにて薬効を証明できるように、宝石も化学・物理的特性が石の効能として結びつくのでしょう。
宝石の色彩
青、赤、黄色に緑……、それは多くの宝石のカラーが意識に作用し、心理面に作用する効果を生みます。
宝石が医薬、迷信的効能を発揮する手段
Cyril Davenport (1848 – 1941) – G. Younghusband; C. Davenport (1919). The Crown Jewels of England. London: Cassell & Co. p. 6. (published in the US by Funk & Wagnalls, NY.) See also The Jewel House (1921) frontispiece., パブリック・ドメイン, リンクによる
ここでは簡単に宝石の効能を引き出す為には、どのように宝石と向き合っていけばいいのかを簡単に説明していきましょう。
内服・外用する
内服する場合、原石、磨いた石と言うよりは、研磨して残ったパウダー状のものを水などで飲み干すパターン、または直接石を身体の部位に置くことで効果が現われるパターンがあります。
身に着ける
宝石によって、薬効や邪眼避けに効果を表す携帯様式は異なり、例えばダイヤモンドは左腕に腕輪として、司教が天と繋がる為には人差し指にサファイアを身に着ける必要がありました。
またかの有名な黒太子のルビーは甲冑にセットされ、エドワード3世の命を守ったことから、どんな危険も回避する伝承にも繋がりました。
宝石別の医薬効能まとめ
ここでは古来から存在が認められてきた複数の宝石を例に、予定調和な美しさを超越した石の隠れた効能を解説していきます。
ダイヤモンド
ダイヤモンドを筆頭にした石の効能は鉱物学が発展していないかった時代に大きな盛り上がりを見せ、特に中世は錬金術の関心と共に石の効能、薬効が注目されました。
ダイヤモンドは毒抜きの効果を見せると同時に、粉末化したものを服用すると毒が回ることが10世紀には議論されています。ダイヤモンドパウダー自体は言わずもがな無毒、しかしながら粉砕したものでも鋭いエッジがあり、内臓を傷つけることからイコール有毒と伝わったと推測できます。
錬金術の巨匠パラケルススはダイヤを盛られて死に、カトリーヌ・ド・メディチはダイヤモンドパウダーを振りかけた食物を市民に振舞い、暗殺に適する毒性かをテストしたとも伝わっているのです。
なおダイヤモンドパウダーの代わりにヒ素が盛られたり、研磨師がケチった為に代わりにロッククリスタルのパウダーを渡され暗殺が失敗に終わったこともあったそう……。(笑)
エメラルド
ベリル属は「目」と関連の深い宝石であり、とくに新緑のエメラルドは宝石研磨師の眼精疲労を取り除き、視力を回復させる宝石でした。近視の古代ローマの皇帝ネロがエメラルドを磨いた眼鏡レンズを身に着けていた伝説は、その通説にロマンを与えてくれます。
古くはエジプトに鉱山があり低品質のエメラルドが産出し、クレオパトラが愛したことからクレオパトラ鉱山と呼ばれました。
なお遥か東の国では、それを粉にして服用することで苛立ちを抑え消化を良くする、また毒を断つ効能もあると信じられ重宝されたそうです。西では視力、東では精神思考、解毒と異なる薬効を見せ、いかに宝石が国の文化や価値観で異なる作用を見出したかが分かるストーリーですね。
コランダム
ルビーとサファイアに関しての薬効についてですが、ルビーは挽いて粉にしたものを内服することで癲癇(てんかん)や喀血(かっけつ)を防いだと言われています。また口にそっとルビーを含むと仁丹の如く、不快な口臭が去り幸福感で包まれるという伝承も伝わります。
一方サファイアはヒアキントゥスと呼ばれ、聖母マリアに繋がる宝石として司教の指輪にセットされた他、牛乳に浸して飲み干すことで毒や感染症を防ぐという効能があります。
有事の際はその効果を有意義に実感したいものですね。なお牛乳ではなく、パウダー状のものを酢に混ぜて飲むというパターンも伝わります。
アメジスト
アメジストはその色合いから葡萄酒と結び付けられ、酒に酔わないお守りとして身につけられてきました。それを服薬する方法での薬効は伝わりませんが、サン&ムーンを石に彫刻することで、邪眼や魔女の魔力から身を守ることができると言われ、ブラッドストーンやカルセドニーなどと同様にインタリオ(※2)として加工されました。なお陽刻であるカメオの場合、不可思議な魔力や効能が発揮される石は少ないようです。
(※2)図像を浮かび上がらせる沈み彫りの技法のこと。
ガーネット
燃える石炭とよばれたガーネットは旧約聖書の中で、ノアが静けさに包まれる夜の海を照らす灯として利用した伝説が有名ですが、中世の時代には疫病を防ぐお守りとしても利用されました。
アルマンダイト、パイロープなどの妖艶な赤いガーネットはそのシンボルカラーがトリガーになり、止血作用や炎症を抑える効能があると信じられました。
まとめ
宝石の医薬効能に関する特徴をまとめると、
- 医薬的側面は宝石の気や元素、色、星などに遡る
- 科学的な関連があるもの、全くの迷信であるものに分かれる
- 時代、国、宗教によって宝石の力が異なる
感性の扉を開いて宝石の薬効、効能を探り出すと、どの宝石にもこじつけにも思えてしまう伝承が多くあることに気づかされます。それらはアラビア人により東方からもたらされ、それがキリスト教や錬金術などの神秘学と結びつき、西欧で中世に大きな発展をもたらしました。
宝石の科学的性質から説得力がある薬効を持つ石もあり、それは視覚効果によるものであったり、神経系に作用する原始的な民間療法としても捉えることができます。
これらの付属的な薬効や効能は宝石としての価値を高めるだけでなく、神羅万象や目に見えぬものへの憧れや帰依に貢献し、令和の現代にも繋がっていくのでした。
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