
近年、世の中のIT化に伴いダイヤモンド業界でもITを利用した技術が活発化しております。そうした技術はダイヤモンド業界にどのような影響を与えているのでしょうか。
今回は「ブロックチェーンとは」といった基本的な事から、今後の世界情勢がダイヤモンドに与える影響までを見てまいりましょう。
ブロックチェーンとは
「ブロックチェーン」=分散型台帳のデータ管理システム
- 各ユーザーで台帳(取引履歴)を共有して保管・管理
- 情報の連携が容易
- 取引の透明性が高い
- セキュリティー面に優れる
「ブロックチェーン」とはビットコインなどの仮想通貨で採用されている「分散型台帳」のデータ管理システムを指します。従来のー元管理型と違い各ユーザーで台帳(取引履歴)を共有して保管・管理するので、連携が容易になり、取引履歴の透明性が高くなるメリットがあります。
また、複雑な暗号技術を多数用いる事で改ざんを防ぎ、高いセキュリティー性を実現できるとされています。
今後、このブロックチェーンは様々な業界で取り入れられるようになると思われます。その最たるものが仮想通貨ですが、現時点(2022年6月)では、まだ正式に流通する通貨としては認められておりません。しかし、世の中AI化が進む中、浸透するのは時間の問題と思われます。
発展途上国で携帯電話、インターネットの普及が急速に進んだように、特にそれらの国では仮想通貨が認められている国もあり、日本国内でもすでに仮想通貨で決済可能な店も出てきております。
ただし、リスクも多く、セキュリティ面・法制度面等、様々な点についてクリアーにする必要性があります。
ダイヤモンド業界のIT化
さて、世の中のIT化に伴いダイヤモンド業界でもIT化が進んでおります。
ダイヤモンドのカラーグレーディング(色見を D~Z で評価したもの)を行うGIAでは、10年ほど前までは鑑定士がマスターストーンを基に目視で判別をしておりましたが、IT化が進み、通常のダイヤモンドであれば 人間に頼ることなく専用機器で鑑定できるようになりました。
もちろんこの過程には、多大な数のデータを収集する必要がありました。これはすべての業界に対しても同じことがいえるでしょう。世の中の進化について行くには常に他業界にも目を向けることが大切であり、いかにリアルタイムあるいは先を見て適応していくかがキーポイントとなるでしょう。
2017年、中国の周大福ジュエリーグループが、T マークダイヤモンドを立ち上げました。このTマークコレクションの各ダイヤモンドには、特許を取得した技術による独自のシリアル番号が刻印されており、起点から生産までの経路を追跡することが可能です。この仕組みにブロックチェーンが活用されています。
また、GIAグレーディングレポートのデータは、ブロックチェーン技術を介して保護されており、今後ますますダイヤモンド業界のIT化は進んでいくものと思われます。
ブラッド・ダイヤモンド vs SDGs-サステナビリティ
- 「ブラッド・ダイヤモンド」=紛争資金の源となっているダイヤモンド
- 「エシカルダイヤモンド」=紛争資金の源にならないダイヤモンド
レオナルド・ディカプリオが出演する映画でもおなじみの、「ブラッド・ダイヤモンド」は「紛争ダイヤモンド」または「コンフリクト(紛争)・ダイヤモンド」とも呼ばれており、紛争資金の源となっているダイヤモンドを指します。
一方で、紛争の資金源にならないダイヤモンドは「エシカルダイヤモンド」や「紛争フリーダイヤモンド」と呼ばれます。
ダイヤモンドはありとあらゆる工程を経て最終的に消費者の手に渡ります。筆者がボツワナ、ハボローネに半年以上滞在していたのが2011年。
ボツワナに本社をおく鉱山企業「デブスワナ(※)」もすぐ近くにありましたが、当時「デブスワナのあるマネージャーが、ボツワナの離れた地域で原因不明の死体となって発見された」などの噂を聞きました。原因はその後判明されたかどうかはわかりませんが…。南アフリカのヨハネスブルグに滞在していた時も、銃声が聞こえるなど怖い思いもしました。
※世界最大のダイヤモンド企業である「デビアスグループ」とボツワナ政府が50%ずつ出資した合弁会社。
日本でもSDGsやエシカル(人・社会・自然に配慮すること)を掲げる企業がかなり多くなってきており、ダイヤモンド業界においても反映されております。デビアス社では 自社開発のブロックチェーン”トラッカー(Tracr)”の 導入が発表されました。
トラッカーの導入によりダイヤモンドの出所と小売店までの流れを正確に把握することができ、消費者に対してダイヤモンドが「ブラッド・ダイヤモンド」で無い事を証明することが可能になります。なお情報はブロックチェーンで保護されており改ざん不可能な記録として提供されます。
このTracrによって以前は不可能とされていたダイヤモンドの追跡が可能になることが証明されたことは、極めて重大な発見であり、最終的にこの技術を幅広い業界で利用出来るようになることを楽しみにしています。
GIAダイヤモンド・オリジン・レポート/原産地レポート
2019年からGIAではダイヤモンド原石に対して産地国レポートを発行するサービスをスタートしました。
ダイヤモンドオリジンレポートサービスは、 GIAが数十年にわたり科学的研究を行ってきた「天然ダイヤモンドの形成と特性」に関するデータと、 GIAグレーディングラボにおいて「数百万にも及ぶダイヤモンドを宝石学の観点から検査した結果」を元に開発されました。レポートの対象となるのは原産国内で研磨前にGIAの分析サービスを通過したダイヤモンドです。
筆者も計り知れない数のダイヤモンドを鑑定してきましたが、 原産国を特定する際は 通常よりもさらに高度な鑑定を行います。いくつものデバイスを使用し、物理的な測定やその他の科学的データを使用して、提出された元の原石と一致したところでようやく原産国の特定となります。
こうして発行されたレポートは、SDGsやエシカルを意識したマーケティングでは重要な付加価値となります。ダイヤモンドのルーツを特定し提示することで、消費者に対して「エシカルダイヤモンド」を謳うことが可能となるからです。
ダイヤモンドと世界情勢の関係
現時点ではロシア・ウクライナ戦争が未だに収束しておりません。アメリカではバイデン政権がロシアのダイヤモンドの輸入を禁止し、2022年4月には同国の最大手ダイヤモンド採掘企業「アルロサ」に対する制裁を発表しました。
アルロサは世界のダイヤモンドの約27%を採掘しており、そのアルロサが制裁対象となったことでダイヤモンドの流通量は減少、ダイヤモンドの価格は高騰すると予想されます。
こういった観点から、今後の世界情勢はダイヤモンド業界に大きく影響を与えるでしょう。
まとめ
- ダイヤモンド業界でもIT化が進みブロックチェーン技術を導入する動きがある
- SDGsやエシカルを考慮した取引がダイヤモンド業界にもみられる
- 消費者が安心してダイヤモンドを購入できるようなトレーサビリティー(※)の確立が必要である
- ダイヤモンドオリジンレポートのような付加価値を付けたマーケティングが注目されている
- 今後の戦争・情勢がダイヤモンド業界にも大きく影響する
※ダイヤモンドの発掘、加工、小売店までの流れを追跡可能な状態にすること。
「ダイヤモンドとブロックチェーン」を中心に近年のダイヤモンド業界についてみてまいりました。
今後世界のIT化に合わせてダイヤモンド業界でもブロックチェーンを利用した情報管理が進んでいくでしょう。そうした技術の向上はダイヤモンドの原産国特定や小売店までの追跡に大きく貢献し、消費者に対して「ブラッド・ダイヤモンド」ではない事を証明可能とします。
近年世界中でSDGsやエシカルを掲げる動きが出ており、GIAダイヤモンド・オリジン・レポートのようなダイヤモンドの原産国を証明するサービスは消費者のニーズにマッチしています。
ロシア・ウクライナ戦争が続く現在、アメリカがロシアのダイヤモンドを輸入禁止とするなどの動きが見られ、そうした動きはダイヤモンドの価格高騰に繋がると予想されます。
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