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今話題の海底ダイヤモンドとは?宝飾業界への影響と人気の理由

2022.12.14 2023.08.03

今話題の海底ダイヤモンドとは?宝飾業界への影響と人気の理由

最近話題になっているのが環境、人に優しいといわれるラボ・グロウン ダイヤモンド。しかし、それ以上に大きな可能性を秘めているのが、海の奥底に眠るダイヤモンドの存在です。

 

「海底ダイヤモンド」、オーシャン・ダイヤモンドやオーシャン・フロア・ダイヤモンド、マリン・ダイヤモンドとも呼ばれています。

 

ダイヤモンドは地中を掘り返して採掘するもの、そんな固定概念を覆す海底ダイヤモンドとは?今回は「次世代のダイヤモンド」と呼ばれている海底ダイヤモンドにスポットをあて、なぜ今注目が集まっているのか、その理由を考察していきます。

海底ダイヤモンドとは

海底ダイヤモンドとは、海面下394〜460フィート(120〜140メートル)の深さで採掘される、海の堆積物の中に存在するダイヤモンドのことです。

 

採掘場所が地中でも海底であっても、ダイヤモンドの性質はまったく同じです。火山の噴火によって地表に姿を表したダイヤモンドが、長い年月をかけて雨水に流され海に到着したと考えれば分かりやすいですね。

 

巷では海底から産出されるダイヤモンドを「第三のダイヤモンド」と呼び、注目を集めつつあります。

 

なお、海底でのダイヤモンド採掘が多くなっている理由として以下があげられます。

  • カナダ、ボツワナなどの鉱山が枯渇すると考えられている
  • 戦争、人権問題を抱えるロシアの鉱山の代替として
  • 経済的に採算が合う新鉱山が発見されていない

 

海底ダイヤモンドの採掘方法

海底ダイヤモンド採掘用のボート

吸い上げ方法は非常にシンプルで、掘削機の代わりにダイバーが海底の砂を汲み上げます。「クローラー」と呼ばれるポンプで海中の泥、砂を吸い上げて、そこからダイヤモンドの原石を選別するというものです。

 

南アフリカ、ナミビアでは50年以上も前から海底のダイヤモンドを採掘しており、2018年以降、これらの地域で産出されたダイヤモンドの多くは海底での採掘作業によるものです。その数値はそれらの地区で採掘された原石の75%に及ぶというデータも出ています。

 

採掘が可能なエリアで採算が取れるだけの採掘しかできず、また海底に眠るダイヤモンドは水深という側面で見ても採掘には困難が伴います。また全てのダイヤモンドがルース、宝飾用に適したクオリティーとは限らないため、海底ダイヤモンドの産出量はまだまだ限局的と言わざるを得ません。

海底ダイヤモンドが注目される理由

海底ダイヤモンドが注目される理由

  • 大きな環境破壊につながることがない
  • トレーサビリティーに優れている
  • 少ないエネルギー、二酸化炭素排出量で採掘が可能
  • 産出地域の雇用にも貢献できる

今まで海底ダイヤモンドに関心が集まることは、ほとんどありませんでした。しかし、ダイヤモンド採掘現場の透明性が求められている時代だからこそ、海底ダイヤモンドの重要性が増してきていると考えられます。

 

まず、海で採掘されたダイヤモンドは地上での採掘とは異なり、非常に大きな環境破壊につながることがありません。

 

ただし、ポンプで大量の砂を吸い上げる必要性が出てくるため、希少生物を含む海洋動物たちの環境、生態系を変えてしまう恐れは危惧しなければなりません。いったん海中の環境が変わってしまうと、元通りに戻るまでに数十年かかるといわれています。

 

しかし海洋汚染はダイヤモンド採掘だけでなく、気候変動、水質汚染や船舶の行き来などさまざまな要因で進んでいるため、あくまで限局された要素にすぎません。

 

最近ではそんな海洋生態に考慮し、地元のプロダイバーによる手作業の採掘が行われているようです。(気の遠くなる作業ですよね……)

 

ダイバーたちによる小規模の採掘が主流になればなるほど、出どころの不明なダイヤモンドが市場に出ることが少なくなります。つまりどのダイバーがどこでダイヤモンドを採掘したのか?というトレーサビリティー(※1)に優れた原石の調達が可能になるわけです。

(※1)ダイヤモンドの履歴管理(産出場所や流通、販売など)を消費者に開示すること。

 

もちろん海底での採掘には人員が必要ですが、地表でのダイヤモンド採掘に比べても圧倒的に少ないエネルギー、二酸化炭素排出量で採掘が可能になり、産出地域の雇用にも貢献できます。

 

ラボ・グロウン ダイヤモンドと同様に環境に優しく(前述の通り、周辺環境の変化はやむを得ないですが)、なおかつ透明性の高いトレーサビリティーを持つことから、エシカル志向であるものの「合成物」には関心のない層にとっては新たな選択肢になっていくはずです。

宝飾業界に海底ダイヤモンド旋風は起こるのか?

合成ダイヤモンドと引き合いに出されることの多い海底ダイヤモンドですが、最近はリングやネックレスなどのジュエリーに海底ダイヤモンドが使われることも多くなってきました。

 

ここではダイヤモンド産業を急速に発展させてきたデビアス社との関わりに触れながら、海底ダイヤモンドジュエリーの今と今後に着目していきたいと思います。

 

デビアス社も海底ダイヤモンドの採掘に取り組んでいる

海底ダイヤモンドのマーケティング戦略

デビアス社といえば天然ダイヤモンドを使用した婚約指輪のマーケティング、ラボ・グロウン ダイヤモンドブランド「Light Box」のローンチなど、ダイヤモンド業界を大きく牽引し話題を呼んできました。

 

そんなデビアス社も、陸上のみならず海底に点在するダイヤモンドの採掘に積極的に取り組んできたことはあまり知られていません。海底ダイヤモンド採掘が可能なナミビア沖で原石の採掘をする為、デビアス社はナミビア政府との合弁企業「デブマリン ナミビア」を設立し2002年から採掘を開始。

 

「デブマリン ナミビア」の操業船が、24時間、365日、スポットを指定しながら海中の砂を浚渫(しゅんせつ)しながらダイヤモンド原石を採掘しています。2035年までの採掘ライセンス契約を結んでいますが、その効率はそこまで良くないそうです。

 

ダイヤモンド原石が海流の流れによって彷徨い、均一的な採掘が難しいことがネックになっています。また、どの一帯にダイヤモンドが埋まっているかの特定が困難で、最新機器による海底調査が必須になる面も無視できません。

 

今後20年間は海底ダイヤモンドが枯渇することはないというデータもありますが、実際は有限の鉱物であり、海中で削られ運ばれて行くため、時間の経過とともに採掘が難しくなります。

 

なお、2022年には最新鋭の設備とエネルギー消費を抑えた採掘が可能になった操業船「Benguela Gem」を導入しており、ナミビアのダイヤモンド産業と投資への関心を高めることが期待されています。

 

海底ダイヤモンドのマーケティング戦略

海底ダイヤモンドのマーケティング戦略

海底ダイヤモンドと地表で採掘されたダイヤモンドは、同じ美しさ・性質を持つ天然ダイヤモンドでありながら採掘場所の違いにより常に比較されがちなので、その扱いが難しい点は否めません。(天然ダイヤモンドとラボ・グロウン ダイヤモンドのように)

 

しかし、日本だけでなくアメリカなどの宝飾メーカーの一部は、海底ダイヤモンドを使用したジュエリーラインを発表しています。

 

環境へのダメージが比較的少ない点、過酷な採掘環境ではない点、信頼度の高いトレーサビリティーがメーカー側にも評価されているようです。また、“生命の根源である母なる海から採掘された”というだけで、それが大きなマーケティング材料になりますし、実際に海底ダイヤモンドの神秘性に魅せられる女性はエシカル指向の女性より多いかもしれません。

 

メーカーの中には特に「エシカルさ」に重点をおき、利用する地金に電子機器や使われなくなったジュエリー、アクセサリーのリサイクルゴールドを使用するところも増えています。

 

どれも言われなければ分からないレベルの話ではありますが、本物志向で高い倫理性を持つ女性陣たちにとっては、海底ダイヤモンドを利用したジュエリーが新たな選択肢になるかもしれません。

 

ただし、前項でもお話した通り、実際海底で産出するダイヤモンド量は限られていること、ラボ・グロウン ダイヤモンドの台頭もあり今後の伸び率はいまいち読めないのが現状です。

まとめ

海底ダイヤモンドに関してまとめると、

  • 第三のダイヤモンドとして宝飾産業で注目を集めている
  • ナミビア沖の限られた海でしか産出しない
  • 優れたトレーサビリティーを持つ
  • 生態系破壊については今後改善の余地あり
  • デビアス社もその存在に熱視線を向けている

最近メディアでも特集されることが多くなってきた海底ダイヤモンドですが、現時点で市場への流通は非常に限られています。

 

主にリングやネックレスなどに海底ダイヤモンドが利用されている程度ですが、ハリウッドセレブがラボ・グロウン ダイヤモンドに大きく関心を寄せたのと同じく、今後はセレブたちが発信源となり海底ダイヤモンド人気に火がつくかもしれませんね。

 

 

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