永遠の愛を語る上で欠かせないダイヤモンド。最近では婚約指輪や結婚指輪に紫外線下で蛍光性を見せるダイヤモンドを敢えて選ぶカップルが増えているそうです。
宝石には蛍光性があるものも多く、例に漏れずダイヤモンドも蛍光性が確認される宝石として知られています。4Cばかりに気を取られがちですが、今回は改めてダイヤモンドの蛍光性をピックアップ。果たしてどんな光の輝きを見せ、評価にどう影響を与えるのでしょうか?
今回は知っておきたい蛍光、燐光(りんこう)の違いから、ダイヤモンドが特殊な光源下で光輝く原理を解説しながら、その魅力を説明していきたいと思います。
ルミネッセンスとは?蛍光と燐光の違いを理解しよう
引用:ダイヤモンドの蛍光性
ここではまず、なぜダイヤモンドがUV(紫外線)下で輝きを見せるのかを知る前に、ダイヤモンド、宝石鑑別で大切になるルミネッセンスを解説していきたいと思います。
ルミネッセンスとは?
ルミネッセンスという言葉をご存知でしょうか?ルミネッセンスはいわゆる発光現象のことを指し、原子、分子や電子などが外部からのエネルギーを吸収する際に、その一部または全部がエネルギー差として光を放出する現象のことです。刺激源としては電子線、紫外線、放射線、X線や熱、摩擦、化学変化など様々で、それぞれ異なる種類のルミネッセンスに分類されます。
例えば海ホタルの蛍光は生物ルミネッセンス、LEDはエレクトロルミネッセンス、そして宝石鑑定の際に重要になるのがフォトルミネッセンスと呼ばれるもので、これには蛍光と燐光(りんこう)が含まれます。
蛍光と燐光(りんこう)の違いについて
引用:GIA The Foxfire Diamond, Revisited
宝石には蛍光性または燐光性を示すものがあります。まず蛍光の原理をザックリと話すと、宝石を構成する原子の回りにある電子が、紫外線などに当たることで本来あるべき軌道から電子が飛び出し、励起(れいき)と呼ばれる高エネルギーの状態になります。
励起状態ではエネルギーのバランスが悪くなるため、基底(きてい)状態と呼ばれる元の安定した状態に戻ろうとします。そのバランスの良い状態に戻る際に放出するエネルギーが蛍光として目に映るわけです。この蛍光性に関しては持続性がなく直ぐに消滅しますが、一方で持続性のある発光を燐光と呼んでいます。
- 蛍光性:発光の持続性がなく直ぐに消滅するもの
- 燐光 :発光が持続性を持つもの
なぜ燐光が蛍光に比べて一定時間発光するのか?それは、励起された状態から基底状態に戻る際に、「三重項励起状態」という段階を踏むため、安定した状態に戻るまでにある程度の時間がかかるからです。ゆっくりと時間をかけて安定状態に戻るため、発光の時間が長くなるというわけですね。
三重項励起状態についてですが、通常の蛍光の場合は電子内のスピンが逆の方向を示しながら基底状態に戻りますが、燐光の場合は三重項励起状態に陥ると、電子のスピンの方向が変わってしまうため、安定した状態に戻るのに時間がかかります。
蛍光性を示すダイヤモンドの条件と種類
ここではダイヤモンドが光るその原因や蛍光の強さを決める条件を解説していきます。
ダイヤモンドが蛍光を示す場合
まず前提として多くのダイヤモンドがUVライト下で蛍光性を示します。ダイヤモンドの蛍光性はまず以下の3要素によって決まります。
ダイヤモンドの蛍光性を決める3要素
- 放射線の種類
- ダイヤモンドのタイプ
- 温度
上この三要素を押さえてダイヤモンドの蛍光性の有無を分類してみましょう。
タイプ1a
タイプ1aは窒素を多く含みます。
特にケープダイヤモンドと呼ばれる黄色みが強い石は、青や薄紫色の蛍光を示します。また、同じ1aであっても暗褐色や薄い褐色を呈する石の場合は、黄色から緑色の蛍光が出ます。
タイプ2a
純度の高いタイプ2aは基本的に蛍光は示しません。
タイプ2b
ホウ素が含有するタイプ2bは、基本的に蛍光は示しません。ただしUV長波では蛍光が出ないものでも、UV短波では赤、または青の継続的な燐光が見られるものがあります。なお、 UV短波も長波も似たような色の蛍光を示しますが、UV長波の方が強い蛍光を示します。
ダイヤモンドの蛍光性の強さについて
引用:GIA ダイヤモンドの蛍光に関する事実の確認:11の迷信を払拭
ダイヤモンドの蛍光は必ずしも石全体に見られる訳ではありません。また、蛍光の強さに関しては以下の項目で決定されます。
蛍光の強さを決める4要素
- 内部欠陥の存在
- 窒素の含有と量
- 結晶構造中における窒素の配置
- まだ判明していないファクターX
ダイヤモンドの蛍光性の強弱、またはその色合いに関しては賛否両論ですが、消費者の中には蛍光性の強みと色合いが、逆に琴線に触れるという観点で蛍光ダイヤモンドを好んで選ぶ方もいます。しかしダイヤモンドの蛍光性に関しては、4C同様にその評価に影響を及ぼすこともあることは忘れてはなりません。
蛍光はどう評価されているのか?その基準は?
引用:GIA ダイヤモンドの蛍光に関する事実の確認:11の迷信を払拭
ダイヤモンドの評価は皆さんご存知の通りカラー、カラット、クラリティー、カットの「4C」で評価され、蛍光性はあくまで補足的な鑑定項目として評価されています。
蛍光性の強さはNone、Faint、Medium、Strong、Very strongの5段階で評価。また色のトーンについては、青、緑、黄色、オレンジ、ピンクなど多用な色合いが確認できます。通常、鑑定書には「蛍光性の強さ」と「色合い」が合わせて記載されますが、「色合い」は蛍光性の強さがMedium以上の場合のみ記載されます。
引用:GIA ダイヤモンドの蛍光に関する事実の確認:11の迷信を払拭
ダイヤモンドの蛍光性のメリット・デメリット
ダイヤモンドの蛍光性が与えるメリット、デメリットについて解説します。
ダイヤモンドの蛍光性のメリット
①黄色味を帯びた石でも無色に見える
全てのダイヤモンドの約30%が蛍光性を示すと言われており、その中の約9割がタイプ1aの青色蛍光を呈します。そして中~強度の青色蛍光が見られる場合は、若干石のカラーが黄色みを帯びていたとしても、青色蛍光によって黄色が相殺されるため、無色に見える場合があります。
②希少性
青以外の蛍光性に関しては、その絶対数が少ないため、希少性という観念で評価することもできますが、その色合いや強度の評価は個々人の判断に委ねられます。
ダイヤモンドの蛍光性のデメリット
①蛍光性によって価値が下がる場合がある
Medium、Strong、very Strong評価の蛍光性がある場合は、同ランクの蛍光性なしのダイヤモンドに比べて価値が下がると考える専門家もいます。ただし蛍光性の評価は世界共通ではなく、文化的な背景などで許容度が異なるため、一概に「蛍光性が強い=品質が劣る」とは言えません。
②透明度に影響を及ぼす
Very Strong Blueの蛍光を持ちクラリティーがD~Fの場合、表面がオイリーと呼ばれる白く濁ったような外観を呈することもあり、透明度に影響を及ぼすことがあるので注意が必要です。
まとめ
- ダイヤモンドには蛍光性を持つ石がある
- 蛍光とは、電子が励起状態から基底状態に戻る際のエネルギー
- ダイヤモンドのタイプによって蛍光の色は異なる
- 蛍光性の強さがMedium以上の場合、蛍光の強さと色合いが鑑定書に記載される
- 青色蛍光の場合は石の黄色みを打ち消すが、強い青色の場合はクラリティーに影響する
ダイヤモンドの蛍光性は個人の価値観に依存する部分が大きく、蛍光性があるからといって必ずしも価値が下がるわけではありません。今回はダイヤモンドが持つ興味深い蛍光性をお話ししてきましたが、この蛍光パターンを知ることはダイヤモンドのタイプから、大まかな産地の特徴を把握することにも繋がるのでぜひ覚えておくといいでしょう。
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