同じ素材、同等の宝石を使っていても一流ブランドのジュエリーだと価格が何倍も違いますよね。ブランドの価値とはどういうところにあるのでしょうか?ブランドの成り立ちからその価値まで深堀りしてみましょう。
ブランドとは?
ブランド【brand】 (焼印の意)商標。名の通った銘柄。「―商品」
ブランドとは広い意味ではすべての商品やサービスを指し、狭義としては高級品や一流品を示す意味で使われます。企業名をブランド名とする場合が多いのですが、一つの企業が複数のブランドを展開する場合もあります。「識別するためのしるし」であるブランドは、競合他社と差別化することが目的です。
ジュエリーにおけるブランドの価値とは?
一流ジュエリーブランドには共通点があります。長い歴史、品質の良さ、代々受け継がれる伝統の技巧・独創性のあるデザインなどです。
品質を保つための企業努力
一流ジュエリーブランドでは、表からは見えないたくさんの努力を重ねています。
優れた素材・宝石を仕入れている
ブランド独自の厳しい基準を設け、優れた素材を仕入れています。最高品質の宝石だけを取り扱っているブランドも多いです。
独創的なジュエリーを生み出す
ブランドには一目見ればわかるアイコン的なデザインがあります。そのブランドならではの伝統的な技巧、デザインに対する思いが詰まった作品です。
良いデザイナーを探す
ブランドの思いが詰まったジュエリーを生み出すための、良いデザイナーが必要です。
良い職人を確保する
ブランドの思いを形にする優秀な職人を確保することも大切です。
アフターサービスの完備
お客様に安心して長く使っていただけるよう、アフターサービスを充実させています。
ケースや包装紙のデザイン等の努力
ブランドのイメージを左右するケースや包装紙のデザインにも力を入れています。
ブランドジュエリーのメリット
ブランドはネームバリューがあるので、品質を信じて購入することができます。ある商品を目にした時、有名人気ブランドの物なら「品質は確かである」とイメージしやすいですよね。購入者が品質を自己判断しなくていい理由は、ブランドに対する信用があるからです。
その他にも、本物を所有し身に着ける喜び、資産価値やステータスがあることなどがブランドジュエリーを持つメリットだと言えるでしょう。
世界的なジュエリーブランド「5大ジュエラー」
ジュエリーブランドはたくさんありますが、「5大ジュエラー」「グランサンク」と呼ばれるジュエラーが世界的なブランドと言えるでしょう。どのような歴史やこだわりがあるのか?押しも押されぬ世界的なジュエリーブランドをご紹介します。
世界5大ジュエラーとは、世界的な知名度、人気、歴史、偉業を誇るジュエリーブランドをいいます。ハリーウィンストン、ヴァンクリーフ&アーペル、カルティエ、ティファニー、ブルガリが該当します。それぞれのブランドをご紹介します。
ハリーウィンストン
宝石店に生まれたハリー・ウィンストンは、24歳の時にひとりで「プレミアダイアモンドカンパニー」を設立。事業を拡大させ、1932年に「ハリー・ウィンストン社」を創業しました。1940年、ブランドを象徴するモチーフ「ウィンストン・クラスター」が完成。
ハリー・ウィンストンでは全てのアイテムに最高品質のダイヤモンドだけを使用しています。アメリカの雑誌「コスモポリタン」から贈られた名は「キング・オブ・ダイヤモンド」。世界の一流のスターがハリー・ウィンストンのジュエリーを身に着けレッドカーペットに登場することから「スターたちのジュエラー」と呼ばれています。
代表的なシリーズ
・ウィンストン・クラスター・コレクション
・サンフラワー
ヴァンクリーフ&アーペル
宝石商の娘、エステル・アーペルと宝石細工職人の息子、アルフレッド・ヴァン・クリーフは1895年に結婚。ふたりはエステルの兄シャルルとともに事業を始めます。1906年、パリのヴァンドーム広場に最初のブティック「ヴァンクリーフ&アーペル」を開店。1950〜60年代には王室関係者や著名人のための高価な一点もののジュエリー制作に注力しました。
モナコ公妃グレース・ケリーの結婚式用アンサンブルジュエリーを制作し、モナコ公室御用達のブランドとなっています。花や蝶など自然界にあるものをモチーフにしたデザインが特徴です。
代表的なシリーズ
・アルハンブラ
・フリヴォル
カルティエ
1847年、宝石細工師のルイ=フランソワ・カルティエは、師からジュエリー工房を受け継ぎ宝飾店を創業しました。1859年、ナポレオン三世の妻ジウニー皇后が顧客となったことで有名に。英国王エドワード7世によって「王の宝石商」と呼ばれました。
息子のアルフレッド・カルティエと共同経営した後、世界的なジュエラーに成長させたのは創業者の孫、ルイ・カルティエです。1898年にパリのヴァンドーム広場に移転。1909年にはニューヨークに支店を出し、革新的なコレクションを発表しました。
世界中の王室やセレブも認めるカルティエは、数々の新たな提案を行ってきました。初めてジュエリーにプラチナを使ったのも、中央に宝石を一つだけあしらった婚約指輪の王道「ソリテール」を考案したのもカルティエです。
代表的なシリーズ
・トリニティ
・ラブ
ティファニー
5大ジュエラーの中でも一番歴史があるのがティファニーです。1837年、チャールズ・ルイス・ティファニーとジョン・B・ヤングは「ティファニーアンドヤング」を設立。1845年、アメリカ初となるメールオーダーカタログ「ブルーブック」を発行。表紙のカラーは「ティファニーブルー」としてティファニーを象徴するカラーとなりました。
1853年には「ティファニー&カンパニー」に社名を変更し、ジュエリー販売を中心に事業を展開しました。アメリカで有名なダイヤモンドの販売元となり、世界の王室や女優、セレブリティから愛され続けています。1886年、「ダイヤモンドが一番美しく輝くセッティング(石留め)」として「ティファニーセッティング」を発表。現在でも婚約指輪の主流となっています。
代表的なシリーズ
・ティファニーT
・バイ ザ ヤード
・ハードウェア コレクション
ブルガリ
1844年、銀細工職人のソティリオ・ブルガリがイタリアのローマに創業。卓越したクラフトマンシップにより瞬く間に名声を博しました。ソリティオの息子、ジョルジョとコスタランティーノが事業に従事し、銀細工の実績を元にハイジュエリーを制作。
1920年代はハイジュエリーの伝統を踏襲したアールデコデザインが主流でした。1940年以降はイエローゴールドのしなやかな螺旋が特徴的な、ブルガリ独自のイタリアンスタイルが頭角を現します。1950年代に登場しブランドの象徴となったのは、カラーストーンを大胆に組み合わせたジュエリーです。1970年代にニューヨークに海外1号店を出店。現在は世界中に150の直営店があります。
代表的なシリーズ
・ビー・ゼロワン
・ブルガリ・ブルガリ
・ディーヴァドリーム
・セルペンティ
世界的なジュエリーブランド「グランサンク」
グランサンクとは、パリのヴァンドーム広場とラペー通りにある高級ジュエリー協会です。「グランサンク」は通称で正式名称は「パリ高級宝飾店協会」といいます。所属ブランドは次の5つです。
メレリオ
1613年創業。400年以上の歴史を持ち、一番最初にヴァンドーム広場に出店した世界最古の宝飾店です。極めて高い品質で、ファインジュエリーからハイジュエリーまで評価されています。4世紀・15代に渡り、家族経営で伝統を継承し続けてきた唯一無二のブランドです。
代表的なシリーズ
・プティ カクタス ヴァニーユ
・カラークイーン
ショーメ
マリーアントワネットのジュエラーの元で修業を積んだ宝石職人、マリ=エティエンヌ・ニトが1780年に創業。間もなくナポレオンの皇后ジョセフィーヌの御用達となり、フランスの歴史とともに歩んできました。2024年パリで開催される夏季オリンピック・パラリンピックのメダルはショーメによるデザインです。
代表的なシリーズ
・ジョセフィーヌ
・ビーマイラブ
・リアン
モーブッサン
宝石細工師ムッシュ・ロシェが1827年に創業。複数の万博での受賞や、展覧会で成功をおさめ知名度を上げました。モーブッサンのジュエリーは多くのオートクチュールと組み合わされ、アールデコスタイルを好む王族からも愛用されました。創業時からカラーストーンに力を入れていて、大ぶりのカラーストーンをあしらったリングが有名です。
代表的なシリーズ
・チャンス・オブ・ラブ
・エトワール
ブシュロン
1858年、フレデリック・ブシュロンが創業。ブシュロンが手掛けるテーマは動植物など自然をモチーフとしたアールヌーヴォーのジュエリーです。パリ万博でグランプリを受賞し、その名をとどろかせました。高い技術で生み出されたジュエリーは、現在も世界のロイヤルファミリーやセレブリティから愛されています。
代表的なシリーズ
・キャトル
・セルパンボエム
ヴァンクリーフ&アーペル
グランサンクであり世界5大ジュエラーでもある唯一のブランドです。説明は前述のとおりです。
まとめ
- ブランドの価値は、「確かな品質」「本物を所有し身に着ける喜び」「資産価値やステータス」にあり
- 一流ブランドには長い歴史、品質の良さ、代々受け継がれる技巧・デザインがある
- 優れた宝石の仕入れ、良いデザイナーと職人の確保、サービスの完備など、表からは見えない膨大な努力をしている
- 世界5大ジュエラーはハリーウィンストン、ヴァンクリーフ&アーペル、カルティエ、ティファニー、ブルガリ
- グランサンクはメレリオ、ショーメ、モーブッサン、ブシュロン、ヴァンクリーフ&アーペル
一流ブランドとはどういうものか、ご紹介しました。長い歴史の中で、ブランドを守り育てる情熱や並々ならぬ努力があってこそ、今日のブランドが存在するのですね。お好きなブランドがありましたら、そのジュエリーの物語を感じてみてくださいね。お気に入りのジュエリーにもっと愛着を持てると思いますよ。
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