近年、サスティナブルやエシカルを意識した商品が多くなっていますね。ジュエリーもリサイクルで素材を有効活用する時代です。複数の有名ブランドでゴールドジュエリーの素材に「リサイクルゴールド」を使用する動きが見られています。ジュエリーのリサイクルの現状、メリットなどをご紹介します。
ジュエリーのリサイクルとは?
ジュエリーのリサイクルとは、貴金属や宝石など、古いジュエリーの素材を再利用して、新たなジュエリーに作り変えることです。リサイクルといっても従来のジュエリーと見た目も純度も品質も変わりません。ジュエリーをリサイクルすることで、貴重な天然資源への負担の軽減につながります。
リサイクルゴールド、リサイクルメタルとは?
古いゴールドジュエリーを再び精錬(金属から不純物を取り除くこと)し純金に戻したものを「リサイクルゴールド」と呼びます。「リサイクルメタル」「リファインメタル」「再生貴金属」と呼ばれることもありますが、全て意味は同じです。金属を精錬せずに溶かして再利用する場合や、古いパソコンや携帯電話、家電の金属を使う場合もあります。
宝石のリサイクル
まず中古ジュエリーから宝石を外し、洗浄、選別(石のサイズや、使えるもの・使えないものに分ける)を行います。次に、宝石の表面に付いた細かな傷を取るためのリカット(再研磨)を施します。こうした工程を経て、輝きを取り戻した宝石は新しいジュエリーへと生まれ変わります。
「リフレッシュジュエリー」と「リフォーム」との違い
「ジュエリーのリサイクル」と似た用語に「リフレッシュジュエリー」と「ジュエリーのリフォーム」があります。それぞれの用語をご説明します。
リフレッシュジュエリー
中古のジュエリーをクリーニングし、丁寧に新品仕上げをしたものを「リフレッシュジュエリー」といいます。中古品買取店で販売しているジュエリーの多くは、リフレッシュジュエリーであり、買取したジュエリーを新品仕上げして販売します。新たなジュエリーに作り替えるリサイクルやリフォームとは異なり、中古ジュエリーが新品だった頃と同等に仕上げるものです。
リフォーム
お手持ちのジュエリーの宝石を利用して、好みのデザインに作り変えることをリフォームといいます。家族から譲り受けた古いデザインのジュエリーなどを、時代に合った新しいデザインに作り変えます。「リサイクルジュエリー」と違う点は、宝石のみを再利用することが多いという点です。既存の枠を使用したり、オーダーメイドで好きなデザインに加工し、地金部分は保管する場合もあれば、下取りに出す場合もあります。
高まる「リサイクルジュエリー」への関心
これまで日本では中古品を良しとしない風潮が続いていましたが、現在は消費者と生産者の意識がポジティブに変化し、ブランドも積極的にリサイクルをアピールする動きがあります。持続可能な社会への関心の高まりや、フリマアプリが広く受け入れられていることが影響しているのでしょう。
世界的に見ても、「リサイクルジュエリー」に力を入れるブランドやジュエラーが増えています。代表的な例をご紹介します。
有名ブランドがリサイクルジュエリーを発表
プラダが発表したジュエリーライン「Eternal Gold」は100%リサイクルゴールドを使用しています。古くからの職人技と、21世紀のラグジュアリーのあり方を示すサステナブルな取り組みです。
デンマークを拠点に100年以上の歴史を持つジュエラー、ジョージ・ジェンセンでも2023年より認証済みリサイクルゴールドを使用しています。認証済みリサイクルゴールドは、生産・流通経路が追跡可能なCOC認定(chain of custby)が付与されており、これは最高品質のゴールドを調達した証しとなります。
また、リサイクルゴールドなどを使用するジュエラーの多くは、環境や地域社会の改善に取り組んでおり、ロンドンのジュエラーalondraは、環境保護や地域を支援する数々の団体と提携しています。日本でも同様に、中古ジュエリーをリサイクルし、人気クリエイターとコラボした旬のデザインを揃えるなど、リサイクルを積極的に取り入れるジュエラーが複数誕生しています。
リサイクルジュエリーのメリット
リサイクルしたジュエリーを身に着けることで、見た目の美しさだけでなく自分がポジティブな影響を与えていることを実感できるでしょう。金属や宝石をリサイクルすることで次のようなメリットがあります。
都市鉱山の有効活用で輸入に頼らない
リサイクルメタルは「都市鉱山」とも呼ばれ、地下資源の乏しい日本でも都市鉱山となると世界トップレベルです。日本には約6800トンの金、約6万トンの銀があり、貴金属以外の金属も合わせると、国内に世界埋蔵量の1割を超える金属があることが判明しています。(出典 国立研究開発法人物質・材料研究機構)その中には再利用できない金属もありますが、多くの金属がリサイクルメタルとなることが期待されており、これを有効活用できれば輸入に頼らなくて済むのです。
人と環境に優しくエシカルである
「エシカル」とは、人、社会、地域、環境に優しい物を購入するライフスタイルのことです。金属をリサイクルすることで、鉱山で採掘するより効率よく金属を手にすることができ、人件費や採掘にかかる費用が抑えられます。
また、リサイクルメタルができるまでのプロセスは、環境に及ぼす影響が小さく、ジュエリー生産にかかわるCO2排出量の90%以上を削減することができます。リサイクルしたジュエリーは、人にも環境にも優しいエシカル製品だと言えますね。
貴重な宝石に出会う機会が増える
近年、採掘終了で閉山した鉱山がいくつかあります。有名なところでは、市場の9割のピンクダイヤモンドを産出していたアーガイル鉱山です。アーガイル産のピンクダイヤモンドは、過去に採掘された石か、市場に出回る還流品でしか手に入れることが出来ません。
参考記事:アーガイル鉱山閉山によるピンクダイヤモンドの行方と価格は?
また、日本ではバブル期に質の高い宝石が数多く流入してきました。特に三大貴石と呼ばれる「ルビー」「サファイア」「エメラルド」の高品質なものは、現在世界的に需要が高まっており入手困難となりつつあります。リサイクルに関心が高まることで、このような新たな産出が見込めない宝石や、過去の貴重な宝石に出会うチャンスが増える言えるでしょう。
まとめ
- リサイクルジュエリーとは素材を再利用して新たなジュエリーを作ることである
- 古いゴールドを再び精錬し純金に戻したものをリサイクルゴールドと呼ぶ
- 中古ジュエリーから外した宝石は洗浄、リカット(再研磨)をして新しいジュエリーになる
- 有名ブランドやジュエラーでもリサイクルゴールドを使用する動きがある
- リサイクルジュエリーは人や環境に優しい
- リサイクルにより過去の貴重な宝石に出会う機会が増える
貴金属も宝石も限られた資源であり、新たなものの採掘は非常に難しくなっています。使わなくなったジュエリーや家電、精密機器など、身の回りに眠っている金属がたくさんありそうですよね。都市鉱山の活用はまだ十分と言えず、これからの分野です。資源を有効に活用して新たなジュエリーに生まれ変わったら素敵ですね。
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