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世界の博物館・美術館にある有名な宝石10選

2024.08.07 2024.08.16

世界の博物館・美術館にある有名な宝石10選

世界には多くの歴史ある宝石やジュエリーがあり、一般に公開されているものがあります。普通の宝石店ではもちろんのこと、日本国内ではお目にかかれない極めて価値の高いものばかりです。世界の博物館・美術館にある有名な宝石・ジュエリーをご紹介します。

 

イギリスで見られる有名な宝石とジュエリー

有名なダイヤモンドが展示されているロンドン塔の宝物館「クラウン・ジュエルズ」
有名なダイヤモンドが展示されているロンドン塔の宝物館「クラウン・ジュエルズ」

イギリスの歴史と王室の歴史がそのまま残っているのがロンドン塔です。いくつかの建物で構成されており、有名なダイヤモンドを見ることができるのが「クラウン・ジュエルズ」と呼ばれる宝物館です。

 

黒太子のルビー

Imperial State Crown.png
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

  • 大きさ:140ct
  • 推定価格:不明
  • 発見された場所:最初の所有者はグラナダ王国王子アブ・サイド
  • 展示場所:ロンドン塔

黒太子(こくたいし)のルビー(Black Prince’s Ruby)は140ctあるスピネルで、大英帝国王冠の正面中央部のクロス・パティに据えられています。「黒太子のルビー」という名前ですが、実はルビーではなくスピネルであることが判明しています。昔はルビーとスピネルは混同されており、ルビーとスピネルが別の鉱物であることが判明したのは18世紀のことでした。

 

黒太子のルビーの歴史とエピソード

黒太子とは14世紀に活躍したイギリスのエドワード皇太子のことを指します。エドワード皇太子は黒い甲冑に身を包み多くの戦場で勝利を果たした勇敢な騎士で、フランス軍から「ノワール(黒)」と称され恐れられたことから「黒太子」の名が付きました。「黒太子のルビー」をあしらった王冠は、エドワード皇太子がカスティーリャ国王ペドロ1世より譲り受けたもので、最も古いイギリスの王冠のひとつです。

後に百年戦争において、ヘンリー5世が黒太子のルビーを取り付けた兜(かぶと)を身に着け戦闘を行い、フランス軍に兜を叩き割られましたが、本人と宝石は無事であったというエピソードがあります。

黒太子のルビーは様々な人の手に渡り多くの戦場を駆け抜け、イギリス王室に戻り、19世紀のビクトリア女王の頃に王冠に装着されました。

 

カリナンI・Ⅱ

Cullinan major diamonds.jpg
出典:Wikipedia By Unknown author – Plate X, The Cullinan (1908)., Public Domain, Link
左上からカリナンII, I, III 左下からVIII, VI, IV, V, VII, IX

  • 大きさ:カリナンIは530ct、カリナンⅡは317ct
  • 推定価格:原石は2600億円、カリナンⅠの推定価格は約440億円
  • 発見された場所:南アフリカ
  • 展示場所:ロンドン塔

カリナンI・Ⅱ(Cullian Ⅰ・Ⅱ)は世界で最も評価が高いとされる、カラー・クラリティともに特に優れたダイヤモンドです。3106ctもある世界最大のダイヤモンドの原石から、大きな9つの宝石と小さな96の宝石が生まれました。9つの宝石は、鉱山開発者トーマス・カリナンにちなんで大きい順にカリナンⅠ~Ⅸと名付けられ、そのうちの大きな二つの宝石がカリナンI・Ⅱと呼ばれています。(他のカリナンダイヤモンドは、英国王室の王妃や女王が身につけるブローチやペンダントに留められています。)

カリナンIは、ふっくらとした洋梨型にカットされた530ctの宝石です。大きさだけでなく「世界一の美の結晶」と称されるほどの美しさを持っています。「Lesser Star of Africa(アフリカ第二の星)」と呼ばれるカリナンⅡは、317ctのオーバル型にカットされました。先ほどの「黒太子のルビー」の下に据えられています。

 

カリナンI・Ⅱの歴史とエピソード

1905年南アフリカ・プレミア鉱山で一人の労働者によって偶然発見された大きなダイヤモンドの原石から生まれたカリナンは、南アフリカのトランスヴァール政府に売却され、1907年、トランスヴァール政府はイギリス国王エドワード7世の66歳の誕生日にカリナンⅠ・Ⅱを贈りました。

後にカリナンⅠは王笏(おうしゃく)のヘッド部分に、カリナンⅡは大英帝国王冠(インペリアル・ステート・クラウン)の正面にセットされました。この王笏と王冠は、今でも戴冠式や英国議会の開会式の際に用いられています。

 

コ・イ・ヌール・ダイヤモンド

Replica of the Koh-i-Noor (cropped).jpg
出典:Wikipedia By aiva. – This file has been extracted from another file, CC BY 2.0, Link

  • 大きさ:105.6ct
  • 推定価格:カリナンの原石(推定で最高20億ドル)以上の価値があると推測されている
  • 発見された場所:インドの鉱山の川に流れているところを採取された
  • 展示場所:ロンドン塔

コ・イ・ヌール(Koh-i-Noor)は105.6ctのダイヤモンドで、かつては世界最大のダイヤモンドと称されていました。この煌めくダイヤモンドを手にしたペルシア王は「コ・イ・ヌール!(光の山)」と叫んだという逸話があります。

 

コ・イ・ヌール・ダイヤモンドの歴史とエピソード

インドで発見された最古のダイヤモンドだとされるコ・イ・ヌール・ダイヤモンドは、ムガール王朝の創始者バーブルによる「バーブル回想」によると、1300年前後にインドの中部のマールワーのラジャ王一族が所有していたとされています。その後、長い歴史の中で数々の紛争や略奪に巻き込まれ多くの所有者の手に渡りましたが、その歴史には諸説あり真相は謎に包まれたままです。

最初は187ctありましたが英国王室に渡った後105.6ctにリカットされ、エリザベス女王の母クィーンエリザベスの王冠にセットされました。

 

フランスで見られる有名な宝石とジュエリー

王家のジュエリーが集められたルーブル美術館の「アポロンギャラリー」
王家のジュエリーが集められたルーブル美術館の「アポロンギャラリー」

フランスのルーブル美術館が優れた多数の絵画や彫刻を所蔵していることを多くの方がご存じだと思います。2020年にリノベーションした「アポロンギャラリー」では王家のジュエリーが集められ、競うように華麗な輝きを放っています。

 

リージェントダイヤモンド

Le Régent - Joseph Cope - Musée du Louvre Objets d'art MV 1017.jpg
出典:Wikipedia By ShonagonOwn work, CC0, Link

  • 大きさ:140ct
  • 推定価格:4800万ポンド(約90億円)
  • 発見された場所:インド
  • 展示場所:ルーブル美術館

リージェントダイヤモンド(Regent Diamond)は140ctのクッションカットのダイヤモンドです。世界で最も美しいダイヤモンドのひとつとされ、マリーアントワネットやナポレオンなどフランスの有名な歴史上の人物が身に着けた宝石でもあります。

 

リージェントダイヤモンドの歴史とエピソード

18世紀初めインドで発見された410ctもあるダイヤモンドの原石は、後に140ctにカットされ、フランス・ルイ15世の王位就任の時にフランス政府が購入したことにちなんで「リージェントダイヤモンド」と呼ばれるようになりました。リージェントとは、君主に代わって政治を執り行う人のことです。「レジャン」と呼ばれることもありますが、Regentは英語読みで「リージェント」、フランス語読みで「レジャン」で同じものです。

名立たるフランスの歴史上の人物がリージェントダイヤモンドを身に着けていて、マリーアントワネットは帽子に着けて公務をこなしたそうです。また、ナポレオンはこのダイヤモンドを剣の鍔(つば)に装着しており、肖像画にも描かれています。(参考画像:Wikipedia

 

サンシー

Diamante detto le sancy, già di nicolas harlay de sancy.jpg
出典:Wikimedia Commons By SailkoOwn work, CC BY 3.0, Link

  • 大きさ:55.23ct
  • 推定価格:100万ドル(約1億5千万円)でルーブル美術館に売却
  • 発見された場所:インド
  • 展示場所:ルーブル美術館

サンシー(Le sancyまたはGrand Sancy)は淡い自然な黄色の55.23ctのペアシェイプのダイヤモンドです。当時最先端だった研磨機を使った、世界で最初の左右対称のファセットを持つダイヤモンドです。

 

サンシーの歴史とエピソード

最初の所有者は14世紀のフランス国王シャルル6世の弟でしたが、17世紀頃の元の持ち主である収集家のボー・サンシー男爵にちなんで「サンシー」と呼ばれています。サンシー男爵が売却した後、世界各国の王家の秘宝として渡り歩いた歴史があり、イギリス王、フランス王、ロシアの王子、インドの王子、アメリカの実業家と所有者が目まぐるしく移り変わりました。アメリカの実業家アスター子爵が売却し、現在はルーブル美術館に所蔵されています。

 

ドイツで見られる有名な宝石とジュエリー

ザクセン王家の宝石が展示されたドレスデン国立美術館「緑の丸天井」
ザクセン王家の宝石が展示されたドレスデン国立美術館「緑の丸天井」

ドイツ東部のドレスデン中心部にあるドレスデン国立美術館には12の博物館があり、「緑の丸天井」と呼ばれる宝物館にはザクセン王家が収集した総額1億1400万ユーロ(170億円)もの宝石があります。その中でも一番貴重だと言われる宝石をご紹介します。

 

ドレスデン・グリーン

ドレスデン・グリーン(Dresden Green)
引用:THE MET How the “Dresden Green” Diamond Became a Symbol of Saxon Rule

  • 大きさ:41ct
  • 推定価格:2億ドル(220億円)
  • 発見された場所:インド(ブラジルの可能性もあり)
  • 展示場所:ドレスデン国立美術館

ドレスデン・グリーン(Dresden Green)は極めて珍しい天然のグリーンのダイヤモンドで、大きさは世界最大の41ctです。結晶中にほとんど窒素を含まない珍しいⅡa型(全ダイヤモンド産出量の0.1%)で内部は完全に無傷です。

 

ドレスデン・グリーンの歴史とエピソード

1742年ポーランド国王アウグスト3世がオランダ商人から買い上げたもので、他の著名なダイヤモンドと異なり、200年もの間所有者も所蔵場所も変わっていない珍しいダイヤモンドです。2000年にアメリカのハリー・ウィンストン社がアメリカで展示企画を行い、スミソニアン博物館に世界最大の青いダイヤモンド「ホープ・ダイヤモンド」と並べて展示されました。この2つのカラーダイヤモンドは産地が同じだと推測されることから、兄弟関係にあるといった伝説があります。

 

アメリカで見られる有名な宝石とジュエリー

多くの宝石や鉱物が見られるスミソニアン博物館内の「国立自然史博物館」
多くの宝石や鉱物が見られるスミソニアン博物館内の「国立自然史博物館」

アメリカには多くの博物館がありますが、中でも多くの宝石や鉱物が見られるのがスミソニアン博物館内の「国立自然史博物館」で、歴史あるジュエリーや宝石を所蔵しています。そして、スミソニアン博物館に次いで多くのコレクションを所蔵しているのは「ロサンゼルス自然史博物館」です。

 

ホープダイヤモンド

HopeDiamondwithLighting2 (cropped).JPG
出典:Wikipedia 350z33 – Transferred from en.wikipedia, CC 表示-継承 3.0, リンク

  • 大きさ:45.52ct
  • 推定価格:2~2.5億ドル(2~300億円)
  • 発見された場所:インドの川で農夫が発見
  • 展示場所:スミソニアン博物館・国立自然史博物館

「呪いの宝石」としてご存じの方も多いのではないでしょうか。ホープダイヤモンド(Hope Diamond)は45.52ctの世界最大のブルーダイヤモンドで、クラリティのグレードは、10倍に拡大しても内包物の確認が難しいというVs1です。持ち主を破滅させながら人の手を転々とするとの伝説がありますが、ほとんどが架空のものであり大幅に誇張されているようです。

 

ホープダイヤモンドの歴史とエピソード

9世紀にインドのコーラルという町の川で農夫が発見したのが最初で、発見された当初の大きさは112.5ctでした。1660年フランスの宝石商タヴェルニエが所有していたものを、1668年にフランス王ルイ14世が購入してハート型にカットしたことで69.03ctになりました。1792年、フランス革命中に盗難に遭い行方不明になります。

1830年に宝石コレクターのヘンリー・フィリップ・ホープが所有したことで「ホープダイヤモンド」と呼ばれるようになりますが、ホープの死後、ホープ家の破産によりロンドンの宝石商へ売却され、その後はアメリカの宝石商、パリの宝石商、カルティエ初代の孫、ワシントンポストのオーナーの息子の妻…と所有者が転々と移り変わりました。1949年にハリーウィンストンが購入し、1958年に「アメリカ国民のために」とスミソニアン自然史博物館に寄贈され現在に至ります。

どの時点でカットされたかは不明ですが、現在のホープダイヤモンドの大きさは45.52ctで、周囲に16個、鎖に45個のダイヤモンドを配したネックレスの中央を飾っています。映画「タイタニック」に登場する「碧洋(へきよう)のハート」と呼ばれるハートシェイプのブルーダイヤモンドは、ホープダイヤモンドがモデルになっているという説があります。

 

スター・オブ・アジア

Starofasiagem.jpg
出典:Wikipedia CC BY 3.0, Link

  • 大きさ:330ct
  • 推定価格:不明
  • 発見された場所:スリランカ
  • 展示場所:スミソニアン博物館・国立自然史博物館

スター・オブ・アジア(Star of Asia)は330ctの世界最高級のスターサファイアです。巨大なサイズと濃いブルー、その中に交差する 3 つの光は星空に匹敵する美しさで、世界的に有名な宝石のひとつとされています。

 

スター・オブ・アジアの歴史とエピソード

1961年に、ファセットカットされた小さなダイヤモンドの小包と引き換えにスミソニアン博物館に転売されました。ビルマのモゴック鉱山で採掘されインドに渡り、ジョードプルという町のマハラジャが所有していたとされますが、これは売却額を上げるために捏造されたエピソードであるともいわれています。

 

ザ・ヒクソンルビー

ザ・ヒクソンルビー(The Hixon Ruby)
引用:GIA ロサンゼルス郡の自然史博物館への訪問

  • 大きさ:196.10ct
  • 推定価格:不明
  • 発見された場所:ミャンマーのモゴック産
  • 展示場所:ロサンゼルス自然史博物館

ザ・ヒクソンルビー(The Hixon Ruby)は196.10ctのルビーの原石で、世界で最も大きく価値の高いルビーの結晶のひとつといわれています。これまで発見されたルビーの原石の中で、最も完璧な結晶の形をしているそうです。

 

ザ・ヒクソンルビーの歴史とエピソード

1978年、所有していたフレデリックC・ヒクソン大佐により、ロサンゼルス自然史博物館に18.29カラットのスタールビーと共に寄贈されました。

 

ティファニーイエローダイヤモンド

ティファニーイエロー ダイヤモンド
引用:Tiffany & Co. ティファニー ダイヤモンド

  • 大きさ:128.54ct
  • 推定価格:1983年に1200万ドル(約14億円)で売りに出されたが購入者はいなかった
  • 発見された場所:南アフリカ
  • 展示場所:ニューヨーク5番街、ティファニー本店

ティファニーイエロー ダイヤモンドは世界最大級のイエローダイヤモンドです。元は287.42ctありましたが、美しいイエローを引き出すために128.54ctにカットされました。大幅なカットで重量は半分ほどになりましたが、大きさよりも美しさを優先する精神はティファニーらしいといえます。

 

ティファニーイエロー ダイヤモンドの歴史とエピソード

1877年に南アフリカで発見されたダイヤモンドをティファニーの創業者チャールズ・ルイス・ティファニーが買い取り、クッションシェイプの美しい姿に仕上げました。現在は120ctを超えるダイヤモンドが添えられたネックレスに姿を変え、ニューヨーク5番街のティファニー本店に常設展示されています。日本では2016年にティファニー銀座本店で特別展示がありました。

 

まとめ

  • 黒太子のルビー 140ctのスピネル、イギリスのロンドン塔に展示
  • カリナンI・Ⅱ 530ctと317ctのダイヤモンド、イギリスのロンドン塔に展示
  • コ・イ・ヌール 105.6ctのダイヤモンド、イギリスのロンドン塔に展示
  • リージェントダイヤモンド 140ct、フランスのルーブル美術館に展示
  • サンシー 55.23ctのダイヤモンド、フランスのルーブル美術館に展示
  • ドレスデン・グリーン 41ctのグリーンダイヤモンド、ドイツのドレスデン国立美術館に展示
  • ホープダイヤモンド 45.52ctのブルーダイヤモンド、アメリカのスミソニアン博物館に展示
  • スター・オブ・アジア 330ctのスターサファイア、アメリカのスミソニアン博物館に展示
  • ザ・ヒクソンルビー 196.10ctのルビー、アメリカのロサンゼルス自然史博物館に展示
  • ティファニーイエローダイヤモンド 128.54ct、ニューヨークのティファニー本店に展示

世界にはたくさんの貴重な宝石やジュエリーがあり、国宝級の素晴らしい宝石が一般公開されています。どの宝石も世界最大級、世界一の美しさと言われており、生で見るとその輝きに圧倒されることでしょう。

展示場所は各国の都市部に集中しているので、宝石・ジュエリー好きならば1つでも多くの宝石に会いに行きたいですね。

 

 

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