婚約をした証として、男性が女性に贈る婚約指輪。みなさんは「婚約指輪」と聞くとどんな指輪を思い浮かべますか?ダイヤモンドがあしらわれた指輪を連想する方が多いのではないでしょうか。
実際に世界的に見ても、ダイヤモンドが使われた婚約指輪が主流となっています。それでは、なぜ婚約指輪はダイヤモンドが主流なのでしょうか?婚約指輪のはじまりと歴史を見てみましょう。
婚約指輪の起源
婚約指輪の起源はエジプトの象形文字にあります。象形文字では「結婚」は「円」で表しました。途切れることのない形が生涯続く「結婚」を意味していたのです。そこから派生し、結婚の約束をした男女は鉄の輪を指に着けて証明していました。それがやがて婚約指輪・結婚指輪につながっていったと考えられています。
左手薬指に着ける意味
婚約指輪は左手の薬指に着けるとされています。その由来は、左手の薬指には“愛の静脈”と呼ばれる心臓に繋がる血管があり、愛のパワーがあると考えられていたからです。そのことから、婚約をした証に左手薬指に指輪を着けるという習慣が始まりました。
婚約指輪を身に着ける文化が誕生した時期ついては諸説あります。ひとつは前述の古代エジプト(紀元前27〜11世紀頃)。その他に、古代ローマ(紀元前1世紀〜紀元後3世紀)、または古代ギリシャ(紀元前8世紀〜4世紀)からである、という説があります。
いずれも左手の薬指に着ける理由は同じ。左手の薬指には心臓に直接つながる血管があると考えられていたからです。
婚約指輪の歴史
婚約指輪の起源はエジプトにあることが分かりました。続いて、古代から現代までの婚約指輪の歴史と、鉄製の指輪がダイヤモンドの婚約指輪になるまで、そして、どのように世界中へ普及していったかを見ていきましょう。
古代
古代では、婚約が成立した証として鉄製の指輪が贈られていました。当時は結婚よりも婚約が重んじられる時代でした。鉄製の指輪はやがて金になり、男性のイニシャルを指輪に彫って贈る、ということもしていたそうです。
中世
金属の輪であった婚約指輪が、宝石があしらわれた婚約指輪のスタイルになったのは中世以降のことです。ダイヤモンドは地球上で一番硬い鉱物であることから、「永遠の絆」「純潔」などの石言葉を持っています。そのことから「永遠の愛を誓う“結婚“を象徴する石」と言われるようになりました。
婚約指輪にダイヤモンドが使用されるようになったのは、15世紀頃。記録に残る最古のダイヤモンドの婚約指輪は、ハプスブルク家・マクシミリアン大帝(のちの神聖ローマ皇帝)がブルゴーニュ公国のシャルル(ブルゴーニュ公)の娘・マリアに贈った物だとされています。四角いカットのダイヤモンドを、二人のイニシャルである「M」の形に配置したものでした。
それから長い間、ダイヤモンドの婚約指輪は王侯貴族など上流階級の人々のものでしかありませんでした。
19~20世紀
18世紀後半から19世紀にかけて、現在でも世界的なブランドとされているジュエラーが続々と誕生しました。
ダイヤモンドの婚約指輪が一般の人々の間でも贈られるようになったのは19世紀頃。ひとつの大きなきっかけは、1866年に南アフリカでダイヤモンドの鉱山が発見されたことでした。鉱山の発見で、ダイヤモンドが安定して供給できるようになったのです。
関連記事:ブランドジュエリーの価値とは?5大ジュエラーとグランサンク
デビアス社の出現
世界中にダイヤモンドの供給を広めたのは、ダイヤモンドの採掘と取り引きを行っている「デビアス社(The De Beers Group of Companies)」でした。
「ダイヤモンドは永遠の輝き」これは人類史上最も成功したと言われるキャッチコピーです。1947年にデビアス社の広告に使われたキャッチコピーは、世界的に展開されました。それまで一部の上流階級の人々のものでしかなかったダイヤモンドが、庶民に広まるきっかけとなったのです。
日本の婚約指輪の歴史
江戸時代までの日本には指輪を身に着ける習慣はなく、婚約指輪と結婚指輪の歴史は明治以降の100年余りしかありません。日本における婚約指輪の歴史を見てみましょう。
ジュエリーの普及は明治後期
明治時代に西洋の文化が一気に入ってきたことで、ジュエリーが普及します。キリスト教式の結婚式で指輪の交換をすることから、大正時代には結婚指輪を身に着けるという文化も定着しました。やがて、さまざまなジュエリー業社が広告を打ち出し、「婚約をする時には婚約指輪を贈る」という風潮が広まりました。
婚約指輪を贈ることが一般的になったのは、1960年代のことです。それまで制限されていたダイヤモンドの輸入制限がなくなり、供給が増えたことがひとつのきっかけです。人々が競って豊かさを求める「高度経済成長期」という時代にマッチしたとも言えるでしょう。
デビアス社の日本上陸
世界にダイヤモンドの供給を広めたデビアス社の日本上陸は、国内のジュエリー業界にも旋風を巻き起こしました。
「ダイヤモンドは永遠の輝き」「婚約指輪は給料3か月分」これらは1970年代のデビアス社の広告のキャッチコピーです。「永遠の愛を約束するダイヤモンドの婚約指輪。一生に一度のことだから良いものを」という気持ちにさせるコピーでした。
現代の婚約指輪
「婚約指輪は給料3か月分」と言われていたのは一昔前のこと。現代では金額に縛られることもなく、選択肢も多岐にわたっています。昔は立て爪リングが主流でしたが、高い爪が引っ掛かり実用的でないことなどから、あまり見かけなくなりました。
現在では、オーソドックスなデザインから、好みに合わせて個性的なものまで選べて、より自由度が高くなっていると言えます。日常的に使えるデザインの指輪や、一からデザインするオーダーメイド、石のあしらいや地金の素材、仕上げ方法などを好みで選べるセミオーダーで婚約指輪を作成することも可能です。
婚約指輪と言っても、婚約期間しか身に着けてはいけないというものではありません。婚約指輪と結婚指輪をセットで選び、一緒に身に着ける人も多くなっています。
終わりに
- 婚約指輪の起源はエジプトの象形文字
- 左手の薬指には「愛の静脈」と呼ばれる血管があるとされ、婚約指輪をつける由来となった
- 古代には鉄製の指輪が送られていたが、15世紀頃からダイヤモンドの指輪が上流階級で使用されるようになった
- デビアス社の出現により、ダイヤモンドが庶民にも広まった
- 日本で婚約指輪を贈ることが一般的になったのは1960年代
- 現代では選択肢に縛られることなく婚約指輪の形は多岐に渡っている
婚約指輪の歴史は古く、その意味は大きく変わっていないことがわかりました。婚約指輪の意味や歴史を知ることで、婚約指輪がより身近に、大切な存在として感じられるかもしれませんね。これから婚約指輪を選ぶという方にも、興味を持っていただけると幸いです。
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