同じような見た目の宝石なのに、価格が全く違うと「どうして?」と疑問に思うことはありませんか?
色とりどりに輝く個性的な宝石たち。宝石として店頭で扱われている物は70種ほどと言われていますが、鉱物も入れると5000種以上あると言われています。その中にはルビーやサファイアなどのポピュラーな宝石とよく似た宝石も存在しているのです。
今回は、似ている宝石の価値の違いと、宝石の価値を決める要素について解説します。
宝石の価値を決める要素
例えばルビーとガーネット、もしくはブルーサファイアとブルートパーズなど、同じような見た目をしているのに大きく価格が異なる宝石が存在します。それらの価値を分けるものは何なのでしょうか?
じつは、宝石の価値は「見た目」だけで決められるものではありません。様々な要素によって価値や価格が変わってくるのです。わかりやすい基準として「希少性」「需要と供給」「歴史背景」が上げられます。
希少性
まず、同じような見た目であったとしても希少性によって価値が大きく変わります。採掘される量ももちろん重要ですが、採掘した段階で美しくない宝石を人工的に美しくする処理がされているかどうかもポイントです。
現在では加熱処理、含侵処理、放射線処理など宝石を美しくする処理があり、これらの処理を行った宝石が多く出回っています。人工処理されて綺麗になった宝石よりも、天然の美しい宝石の方が希少性が上がり価値が上がります。
需要と供給
皆さんもご存知の通り、需要に対し供給量が高くなれば、おのずと宝石の価格は上がっていきます。ロシアとウクライナの問題でロシアから産出されたダイヤを大手ジュエリーブランドが購入しなくなったことでもわかる通り、宝石は世界情勢によって供給量、需要が変化する品物です。
重要なのは価格が上がったからと言って価値も上がるというわけではないということです。価格は売り手が決めることですが、その宝石に価値があるかどうかは買い手の判断になります。
歴史背景
歴史的価値も宝石にとって非常に重要な要素の一つです。例えばルビー、サファイアは非常に歴史が古く多くの伝承や物語が生まれていますし、エメラルドはクレオパトラが愛した宝石として有名ですね。ダイヤモンドは紀元前800年にはお守りとして尊ばれていました。
このような歴史ある宝石は人々の憧れの対象になりやすく、多くの人が「手に入れたい」と思う価値要素になります。
逆に、希少で美しく硬度がある宝石でも、全くの新種であればどうでしょう。一部のコレクターには人気が出るかもしれませんが、三大貴石のように世界中の人が価値を認めるには長い時間がかかるでしょう。
似ているけれど価値が違う宝石
それでは見た目が似ているけれど価値が違う宝石について、どんなものがあるでしょうか。代表的な宝石であるルビー、ブルーサファイア、エメラルドとそれによく似た宝石を比べてみましょう。
ルビーとガーネットとスピネル
左がルビー、右がガーネット
ルビーとガーネット、そしてスピネルは非常によく似た色をしている宝石で、特にスピネルは鑑別技術が確立されるまではルビーだと思われていました。ではなぜルビーの方がこの二つよりも価値が高くなるのでしょうか。
まずガーネットとルビーは、歴史的に見るとどちらとも古くから人々に親しまれてきた宝石です。ですがガーネットは非常に産出量が多く大ぶりなサイズが見つかりやすいのに対し、ルビーは産出量が少なくサイズも1ctを超えるものは稀です。
ではスピネルはどうかというと、スピネル自体はルビーの10分の1しか産出されないと言われています。それなら、スピネルの方が価値が出るのでは?と思われるかもしれませんがそうではありません。なぜならスピネルが明確にルビーと区別されたのは1783年と最近なのです。
美しい宝石ながらルビーとよく似た宝石であるために、どうしてもルビーと比べられてしまうのですね。さらに産出量が少ないため商品化されて市場に出回る絶対量が不足していることも理由として上げられます。
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ブルーサファイアとブルートパーズ
左がブルートパーズ、右がブルーサファイア
ブルーサファイアとブルートパーズ、どちらも美しい色と輝きをもつ宝石ですがその価値は大きく異なります。なぜならブルーサファイアとブルートパーズでは希少性が違うからです。
元々、サファイアとトパーズではサファイアの方が産出量が少ないのですが、美しいブルーサファイアはさらに少なく、最高級の色には「コーンフラワーブルー」という名前がつくほどです。
加熱処理によって色の良いブルーサファイアは増えましたが、加熱処理で色が改善されるかどうかは原石の状態によって違い、全てのブルーサファイアが美しくなるわけではありません。それに対しブルートパーズはほぼ全て人間が放射線処理を施してブルーに仕上げています。一度にたくさん宝石を処理できるため、ブルートパーズの希少価値は非常に低いんですね。
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エメラルドとペリドット
左がペリドット、右がエメラルド
エメラルドとペリドットはどちらもグリーンの宝石です。エメラルドの方が濃く鮮やかな色をしており、ペリドットは黄緑に近い緑色をしています。
エメラルドの方が価値が高いと言われているのは、やはりその歴史的価値から需要が非常に高いため、そして大きくてハイクオリティのものが見つかり難いという点が挙げられます。それに対してペリドットは10ctを超える大きさのハイクオリティのものが手に入りやすく、エメラルドに比べると非常に安価になっています。
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まとめ
- 宝石の価値を決める要素は「希少性」「需要と供給」「歴史背景」
- 採掘量が少ないと「希少性」が高くなり価値も上がる
- 人工処理された宝石よりも、天然の美しい宝石の方が価値が高い
- 需要と供給のバランスにより価格が決まり、世界情勢によっても変化する
- ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドのような長い歴史があると価値要素も高まる
同じように見える宝石でも石種によって価値と価格が変わってきます。特に希少性、需要と供給、歴史的背景は宝石の価値と価格を決定するのに大きく関わっており、宝石を語る上でなくてはならないものです。いろんな宝石を比較するのも非常に面白いですよ。
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