石好きの方なら物語の中に宝石が出てくると嬉しいですよね。子どものころに読んだ童話も改めて読み返してみると「こんな宝石が登場していたんだ!」と思い出すかもしれません。
本記事では宝石にまつわる童話・小説・エッセイなどをご紹介します。個人的な感想とおすすめポイントを書いているので、ぜひ参考にしてみてください。
童話「幸福の王子」
作者:オスカー・ワイルド
ある街の柱に立つ「幸福の王子」と呼ばれる像は、幸福な生涯を送りながら若くして亡くなった王子の像であった。両目にはサファイア、腰の剣にはルビー、心臓には鉛が埋め込まれ、全身は金箔で覆われていた。
王子の像には魂が宿っていて街の貧困を嘆き悲しんでいた。王子はツバメに頼み、自分のルビー、サファイア、金箔を街の困っている人々に届けてほしいと頼む。王子はみすぼらしい姿になりツバメは力尽きた。
王子は心無い者に溶鉱炉で溶かされ、残った鉛の心臓はツバメのなきがらの近くに捨てられた。そんな下界の様子を見ていた神に仕える天使に発見され、王子は楽園でツバメとともに永遠に幸福に暮らした。
登場する宝石
サファイア、ルビー
おすすめポイント・感想など
子どもが最初に出会う宝石は絵本や童話であるかもしれませんね。ルビーとサファイア、全身に金箔をまとった美しい王子がどんどんみすぼらしくなっていき、ついには溶かされてしまうシーンが子ども心にショッキングでした。こんな幸せなラストシーンがあることを知らなかったのか、忘れていたのか…。
「本当の幸せ」とは何なのか、何度読んでも心に響く、胸が熱くなる物語です。童話ですが大人向けの本とも言えます。
童話「オズの魔法使い」
作者:マイラン・フランク・ボーム
家族とともに暮らしていたドロシーは、突然の竜巻で見知らぬ国に飛ばされてしまった。元いた場所に戻るには「エメラルドの都」にいるオズの魔法使いに頼むしかないという。
ドロシーは道中に出会ったかかし、ブリキの木こり、ライオンとともに勇気と知恵を出し合ってエメラルドの都を目指す。
登場する宝石
エメラルド、ルビー、ダイヤモンド
おすすめポイント・感想など
絵本では短くまとめられていますが、実は13もの続編がある長い長い物語です。エメラルドの都は何もかもがエメラルドでできています。家も道路も城壁もエメラルドでできていて、洋服も空もエメラルドグリーン。「こんな世界に行ってみたい!」と想像を掻き立てられますね。
そのほかにもダイヤモンドのブレスレットや金の杖、宝石を散りばめた油差しが登場したりと「どんな財宝が出てくるのだろう?」という視点で見ても楽しむことができます。
小説「サファイア」
作者:湊かなえ
それぞれ宝石のタイトルがつけられた短編集。七つの宝石になぞらえた女性の心情を描く。
真珠
主人公はいつも自分が身につけていた真珠のイヤリングを親友に身に着けさせ、親友の住む寮に放火する。亡き親友として生きる主人公の目的は一体何なのか?
ルビー
母親に贈られた一億円相当だというブローチをめぐり、姉妹の人生が動き出した。
ダイヤモンド
助けた雀が女性に変身し、雀との会話で婚約者に騙されていたことに気づく。男性は、婚約者からダイヤモンドの指輪を取り返してきてほしいと雀に頼む。
猫目石
猫が行方不明になった。やがて猫は隣のマンションの住人に発見されるが、飼い主一家の秘密を隣人に知られてしまう。
ムーンストーン
クラスメイトからいじめを受けていた久美と、久美を助けた女子小百合。二人は仲良くなったが、クラスメイトのお土産のムーンストーンのピアスは小百合しかもらえなかった。土台からムーンストーンを外し、二人はひとつずつ名札に着けていた。やがて加害者と弁護人という形で二人は再会する。
サファイア
二十歳の誕生日に恋人からサファイアの指輪を贈られる夢を見た主人公。翌日恋人は事故で帰らぬ人となった。恋人の姉に聞くと、本当にサファイアの指輪を用意していたのだった。
ガーネット
サファイアの続き。主人公が書いた小説が大ヒットし映画化される。主演のベテラン女優と対談した際に「人生を変えた物」として女優が見せたのは「暁の空に輝くガーネットを見つけた」と書かれたポストカードであった。送り主は主人公にも関わりのある人物だった。
登場する宝石
真珠、ルビー、ダイヤモンド、猫目石、ムーンストーン、サファイア、ガーネット
おすすめポイント・感想など
宝石を共通のテーマとした短編集でとても読みやすいです。それぞれがカラーの違う独立した物語ですが、「サファイア」と「ガーネット」は二つで一つの物語になっていて読み応えがあります。
ミステリーあり、家族ドラマあり、ハッピーエンドあり…みなさんはどの宝石の物語がお好きですか?
小説「宝石商リチャード氏の謎鑑定」
作者:辻村七子
宝石商リチャードが酔っ払いに絡まれているところを助けた大学生、正義。正義は祖母のいわくつきのピンクサファイアの指輪の鑑別を依頼したことがきっかけで、リチャードの宝石店でアルバイトを始める。リチャードと正義のコンビが、宝石の持ち主の隠れた心理を紐解くミステリー。
登場する宝石
ダイヤモンド、シトリン、エメラルド、ラピスラズリ、アクアマリン、タンザナイト、ペリドット、タンザナイト、ルビー、珊瑚、アレキサンドライト、オパール、トルコ石、ガーネット、キャッツアイ、翡翠、琥珀、パライバトルマリン、他
おすすめポイント・感想など
宝石の解説も多く、宝石が好きな人が嬉しくなるような小説です。宝石に興味がなかった人も興味を持つきっかけになるのではないでしょうか。
「ジュエルミステリー」という肩書きがついていますが、人の優しさが満ち溢れた心温まるストーリーで安心して読むことができます。2023年11月現在13巻まで出版されています。
小説「冷静と情熱のあいだ」
作者:江國香織、辻仁成
フィレンツェで再会したかつての恋人たちの物語。江國香織氏、辻仁成氏が同じ物語をそれぞれ女性の視点、男性の視点で描く。ジュエリーショップで働く主人公のあおいと絵画修復師の順正は、大学時代に出会い、互いに運命の人だと思っていた。十年前の約束を二人は覚えているだろうか。
登場する宝石
エメラルド、猫目石、瑪瑙、ローズクォーツ、翡翠、アメジスト、オニキス
おすすめポイント・感想など
2003年に竹野内豊とケリー・チャン主演で映画にもなった物語です。小説では、映画には描かれていないエピソードや心の移り変わりが読み取れます。
ジュエリーを買ったお客様がどんなふうにジュエリーを身に着けるのか、ジュエリーを贈られたひとの生活、ジュエリーのある生活を想像するのが好きだという主人公あおい。美しいジュエリーに囲まれた穏やかな生活、ジュエリーが売れた時の心の描写など、ところどころにあおいが働くジュエリーショップの光景が登場します。
江國香織氏が綴る赤の本、辻仁成氏が綴る青の本、ぜひどちらも手にとっていただきたいです。
エッセイ「ももこの宝石物語」
作者:さくらももこ
ちびまる子ちゃんでお馴染みのさくらももこ氏が、一冊の本をきっかけに宝石に興味を持ち始め、パライバトルマリンと運命的な出会いを果たす。
宝石を買うだけでなく、スリランカの採石場を見に行ったり、インドの宝石の街ジャイプールを取材した流れで有名なマハラジャの宮殿に招待されたりと、周囲の人や家族を巻き込みながら宝石の沼にハマってゆくおもしろ宝石エッセイ22編。
登場する宝石
パライバトルマリン、エメラルド、翡翠、スタールビー、スターサファイア、トパーズ、ブラックオパール、ムーンストーン、真珠、アクアマリン、真珠、サファイア、ブルージルコン、コルコンダ・トルマリン、タンザナイト、ターコイズ、アレキサンドライト
おすすめポイント・感想など
さくら氏が理想的な宝石を目にした時の心情や「宝石のことを考えると楽しくてたまらない!」と言う様子など、石好きの方なら深く共感できるはず!
この本の第二の主人公とも言える宝石商の岡本氏と共に灼熱のスリランカで原石探し、遂にはインドへ宝石の旅に出るなど、宝石が市場に出る前の様子も知ることができて読み応えがあります。
抱腹絶倒のさくら節で、宝石に興味のない人でも宝石店に足を運んでみたくなるようなエッセイです。
終わりに
宝石が登場する本の数々をご紹介しました。昔読んだことがある本でも「どんな宝石が出てくるかな?」という視点で読んでみると新たな発見があるものですね。
ほかにも宝石が登場する物語や漫画があるので、ぜひ物語の中の宝石を見つけて楽しんでくださいね。
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