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宝石はどう循環する?鉱物の誕生から流通まで

2024.04.10 2024.04.15

宝石はどう循環する?鉱物の誕生から流通まで

ここにひとつの宝石をあしらったジュエリーがあるとします。
宝石の誕生は、鉱物が発掘されるところから始まるのでしょうか?実は地球の誕生から始まっています。そして終わりはないのかもしれません。宝石とジュエリーの一生を追いかけてみましょう。

 

鉱物が誕生するまで

宝石ができる場所

46億年前に地球が誕生して、その20億年後にダイヤモンドが地下150㎞(200㎞との説もあり)のマグマで結晶しました。宝石ができる場所は、地表から660㎞のマントル遷移層(せんいそう)、410㎞の上部マントル、60〜30㎞の大陸地殻、5〜6kmの海洋地殻です。

 

鉱物はマグマや液体、気体に溶け込んだ化学成分が、温度や圧力の低下で個体になって誕生します。熱水が岩石の割れ目を通過する時に、熱水中に溶けた物質と岩石中の鉱物が反応し、別の鉱物ができることもあります。さらに、いったんできた鉱物が液体や気体の反応で別の新たな鉱物を作る場合もあります。

 

鉱物の他にも、生物から生まれる宝石もあります。真珠、珊瑚などは有機物であり生物起源の宝石です。

 

宝石が生まれる場所

宝石が生まれる場所は大きく分けて、地表近く・中間の地殻・地表深部の3つに分かれます。( )はモース硬度

 

地表近く(海・水辺を含む)
オパール(5)、カルセドニー(7)、トルコ石(5)、マラカイト(3.5)、アメシスト(7)、珊瑚(3.5)、真珠(3.5)、琥珀(2)

中間の地殻
エメラルド(7.5)、トルマリン(7)、アクアマリン(7.5)、ムーンストーン(6)、トパーズ(8)、ルビー(9)、サファイア(9)

地表深部
ダイヤモンド(10)、パイロープガーネット(7)、ペリドット(6.5)

鉱物はどうやって発見される?

鉱物はどうやって発見される?

宝石が誕生するのは地表から660㎞~30㎞ですが、人類が到達した最深記録はわずか地下12㎞です。それでは、地下深くで誕生した宝石はどうやって発見されるのでしょうか?

 

鉱物は火山活動などの地殻変動により、長い年月を経て人の手の届く場所までやってきます。地表に押し上げられた鉱物を、人が偶然に発見するのです。逆に言うと「地殻変動がなかったら鉱物は発見できない」と言えますね。偶然の発見から、源の一次鉱床(原石ができた場所)にたどり着く場合もあります。

 

豆知識:「採算が取れるか」が鉱山の条件

すべての鉱山に言えますが、採算が取れることが重要です。たとえ鉱山に鉱物が残っていたとしても、採掘にかかるコストが販売価格を上回るなら、閉山せざるを得ません。新しい鉱床が見つかると、初めのうちは容易に鉱物が見つかるので鉱山労働者が集まりますが、やがて鉱物の質が落ちたり、他に収益性の高い場所が見つかるなど、採算が取れなくなると衰退します。

 

ちなみに一番の深部にある鉱物は金です。金は深さ3900mもの深さにありますが、効率の良い鉱山なので存続が可能なのです。

 

関連記事:アーガイル鉱山閉山とピンクダイヤモンドの行方と価値は?

カットされて原石から宝石へ

カットされて原石から宝石へ

宝石は発見したそのままの姿では輝きを伴いません。その美しい煌めきは「カット(研磨)」を施して生まれるものです。カットは宝石の美しさを最大限に引き出すためにおこなわれる大切な工程で、色を濃く鮮やかに見せたり輝きを増幅させることができます。最終的に宝石が美しく輝くかどうかはカッターの腕次第と言ってもよいでしょう。

 

カットする際は、宝石の硬度、耐久性、透明度などを考慮しながら、「立体」「形状」「面の取り方」を見極めて仕上げます。ジュエリーには最適な石のサイズがあるので、大きすぎる石は分割し、また宝石質でない不要な部分は砕いて取り除きます。

 

カットの種類は「立体」「形状」「面の取り方」で数百通り存在し、縦横の比率・輪郭・不定形まで含めると数十万通りになります。

 

関連記事:ファンシー&ファンタジーカットの違いは?研磨の種類と魅力を解説

 

カット(研磨)の3要素

カット(研磨)の3要素

カットの3要素は「立体」「形状」「面の取り方と仕上げ」です。

 

立体
原石の種類、透明度、内包物の有無で立体を決めます。
ブリリアントカット、カボションカット、ブリオレットカット、ローズカット、タンブリング、ビーズ、平板、など

 

形状
上から見た形状を決めます。
ラウンド、オーバル、ペアシェイプ、マーキス、エメラルド、バゲット、クッション、
スクエア、ハートシェイプ、トリリアント、など

 

面の取り方・仕上げ
宝石の個性・用途で面の取り方を決めて仕上げます。
ブリリアントファセット、ステップファセット、チェッカーボードファシェット、カボション、シーゲルファセット、彫刻、など

 

豆知識:ダイヤモンドのカットの始まり

人類とダイヤモンドの出会いは紀元前800年のインドです。硬すぎてカットができず、発見されてから初めてカットされるまで2200年もかかりました。

 

カット技術は14世紀後半にヨーロッパで発明されました。しかし人々は「ダイヤモンドは自然のままでこそ力を発揮する」と信じていたので、15世紀以降もしばらくは、正八面体のダイヤモンドをセットした指輪が好まれました。

ジュエリーに仕立てる

ジュエリーに仕立てる

カットされた宝石をジュエリーに仕立てます。美しい宝石を大切にしまっておくだけではなく、身に着けて楽しむために仕立てたのがジュエリーです。長く身に着けられるジュエリーの条件は、「宝石の良さを生かすこと」そして「丁寧な仕立て」です。

 

その宝石の良さが生かされたデザインとセッティング(石留め)方法であるか、ほかの宝石と調和しているかが大事です。時間と手間をかけた丁寧な作りが、使う人や受け継ぐ人に喜ばれ、流通の価値に大きく影響します。

私たち消費者の手に渡る

私たち消費者の手に渡る

出来上がったジュエリーは私たち消費者の手に渡ります。宝石の値段は、原石探しから小売店のスタッフの人件費まですべての費用の合計です。決して安いとは言えないジュエリーを、人はなぜ宝石を持ちたいと思うのか?その動機を探ってみましょう。

 

関連記事:ジュエリーが高いワケ!価格は妥当?小売価格は下がらない?

 

人はなぜ宝石を持ちたいと思うのか?

経済的に余裕ができると「宝石を持ちたい」と願う人が多いようです。宝石を持つ動機はおよそ4つに分かれますが、1つだけではなく重複する場合もあります。

 

身に着ける
「ジュエリーを身に着けたい」というのが一番多い動機でしょう。ジュエリーは、身に着ける人の魅力を際立たせてくれますし、ファッションに合わせて楽しむことができます。

 

道具として使う
結婚指輪や、冠婚葬祭で身に着ける真珠のネックレス、ロザリオや数珠などは道具として使う宝石の代表です。パワーストーンやヒーリングストーンも、幸運や癒しを願う道具の役割をしています。

 

資産として持つ
1900年当時に200円だったラウンドブリリアントカットのダイヤモンド(カラット数不明、中級品質)は、現在卸価格で100万円です。120年ほどで5000倍に上がっています。

 

コレクションする
好きな宝石を集める、好きなブランド、デザイナーのシリーズを集める、レアストーンを集めるなど、楽しみ方は多彩です。

次の持ち主へ流通する

次の持ち主へ流通する

ほとんどの製品は使用すると価値がなくなりますが、宝石・ジュエリーは価値が残ります。それは、宝石が変質しにくく、丁寧に使えば中古品でも流通するからです。長く使っていると地金の部分が曲がったり変色したりすることは避けられませんが、メンテナンスをしながら大切に使って、次の人に引き継ぎたいですね。

 

ひとつのジュエリーは、平均して約30年ほどで次の持ち主の手に渡ると考えられます。親子・親戚の間で受け継がれたり、質屋や貴金属買取店、オークションなどの市場に流通します。本物の宝石は価値を持ち続けて今後も流通していくでしょう。

まとめ

  • 鉱物は地殻の状態、温度、圧力などさまざまな偶然が重なり合って誕生する
  • 地中深くで生まれた鉱物は、地殻変動などで地表に押し上げられ発見される
  • 硬度、耐久性、透明度などを考慮しながらカット(研磨)される
  • 仕立てられたジュエリーは消費者の手に渡り、約30年ほどで次の持ち主の手に渡る

宝石は大自然からの預かり物です。地球が生み出し、人によって美しさに磨きが掛けられました。誰かの手に渡っても、また循環して次の世代へ引き継いでいきます。長く身に着け、大切に扱い、また誰かの手に渡ると考えると、長い長い宝石の物語は終わりがないのかもしれませんね。

 

(参考書籍:価値がわかる宝石図鑑 諏訪恭一著)

 

 

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