
ジェダイ、その言葉に「んっ!?」と思った方はきっと少なくありません。最近日本でもホットな宝石として人気を集めているピンク色のスピネルは、皆さんの想像通りあの有名映画に由来します。
ピンクサファイアが人気を集める昨今、ジェダイスピネル(Jedi Spinel)もそれに次ぐ、いやそれ以上に今後の価値が期待できる宝石の一つかもしれません。
今回はそんなジェダイスピネルの定義、品質の基準、歴史について解説します。ライトセーバーの蛍光色、それが今回のテーマのヒントになりますよ!
そもそもジェダイスピネルとは?その定義を解説

引用:GIA Hunting for “Jedi” Spinels in Mogok
スピネルはモース硬度8、様々な微量元素が発色要因になり煌びやかなカラーワールドを見せる宝石です。そんなスピネルの中で最近よく耳にするジェダイスピネルは非常に審美性の高い色合い、そして希少性を兼ね備えた宝石として取引されています。
ジェダイスピネルとは、ネオン感のあるホットピンク~レッドの色相を持つミャンマー産スピネルのことです。その色合いと彩度を考慮したコマーシャルネーム(※1)であり、あくまで市場に流通する際に利用されるトレードネームになります。
(※1)宝石の正式名称ではなく、市場に流通する際に付けられる名前のこと。パパラチアサファイアやレッドエメラルドなど。
ジェダイスピネル名前の由来

このジェダイという形容は言わずもがな「スターウォーズ」のジェダイの騎士に触発されたものです。
映画に疎い方もいると思いますが、つまりジェダイの騎士はスターウォーズの中で、悪者と戦う聖なる騎士であり、くすみや鈍い色相を持たず、高い彩度を持つ石をジェダイになぞらえているわけですね。(ダークサイドを一切感じさせないようなピンクの輝きということでしょうか。)
このネーミングに関して若干異論や無理があるのも事実、特にスターウォーズファンは…。笑
ジェダイスピネルの特徴

引用:GIA Hunting for “Jedi” Spinels in Mogok
さてここでジェダイスピネルとは一体どんなスピネルなのかについて、少し踏み込んで解説します。
- 色ムラがないネオンピンク、レッド
- 強いテリがある
- 蛍光性が強い
- 加熱等の処理が行われていない
- 目立つ内包がない
ジェダイスピネルは一度見ただけで目に焼き付くようなホットピンク、バブルガムピンク~レッドのネオン感を持ち、通常のピンクやレッドスピネルとは異なる色相と彩度を放ちます。
ジェダイスピネルという言葉の認知度は高まってはきましたが、そこまで多くの石が流通しておらず、いわゆる独り歩き状態が続いています。
また品質基準が不明瞭な側面もあり、通常のピンクスピネルであっても「ジェダイスピネル」と評価されることもあるため、今後より議論が必要になる宝石と言えます。
ジェダイスピネルの歴史とマーケティング戦略
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まずジェダイスピネルを語る上で欠かせない人物が、GIAバンコクのシニアマネージャーあるヴィンセント・パルデュー(Vincent Pardieu)氏です。彼は2002~2004年のミャンマー滞在時に初めて「ジェダイ」というトレードネームを使った、いわゆる産みの親です。
ヴィンセント・パルデュー(Vincent Pardieu)氏のインスタグラム
2000年代の始めの時期からジェダイと呼ばれるネオンピンクの宝石は産出していたので、この時期がジェダイスピネルのスタート地点だと言えます。
なおヴィンセント氏はバンコクの宝石鑑別機関であるAIGSの設立者であるヘンリー・ホウ(Henry Ho)氏の元で働いていたこともあり、このジェダイスピネルという名前は二人が共同で使用していました。
宝石の色によって区別されるネーミングの例としてパパラチア、ロイヤルブルー、コーンフラワーブルー、ピジョンブラッドなどが挙げられますが、石の美しさに加えて優れたコマーシャルネームを施すことはマーケティングに大きく寄与します。ジェダイは非常に長けたネーミングであり、購買欲を刺激するのに十分な言葉の強さと魅力が感じられます。
中国圏で人気を集める理由は?

2014年にヴィンセント・パルデュー氏が発表したGIAレポート内でこのジェダイスピネルを特集、その記事が中国語に翻訳されたことがきっかけになり、特に中国圏で人気を高めていきます。
その背景には色石ブームなどが重なり、特に中国マーケットで強い関心を集める結果になりました。色石に関する期待値の高さは日本も同様ですが、中国では赤色に財運や幸運、邪気払いなどのイメージを投影する傾向が高い点も、赤系統の石に人気が集まる理由かもしれません。
現在でも国際的な宝飾フェアでは、中国系のバイヤーがピンクでもレッドスピネルでもない、「ジェダイスピネル」の行方を血眼で探しています。
しかし、ジェダイスピネルが産出される地区が限られていること、結晶が非常に小さいこと、ジェダイ判定を下す基準が不明瞭なことから、需要を満たす十分な量が流通していないのが現状です。
ジェダイ判定が出る条件は?AIGSが発表したルールから分かる見解
ジェダイスピネルは色範囲だけでなく、様々な要素を考慮して評価しなければなりません。基準値が一定でないために、内包物が多量にあるものやピンクの色合いが強すぎたり、トリートメントを施したスピネルですら、ジェダイスピネルとして取引されたこともありました。
成分の違いやちょっとしたカラートーンの違いで、評価が大きく異なるからこそ気になるのが評価基準です。ここではジェダイスピネルに関して、どのような側面で品質が定義されるのかを考察していきます。
ジェダイスピネルの色範囲と鑑別の基準
ジェダイスピネルの判定基準は、ロイヤルブルーやピジョンブラッド等と同様に明確には設定されておらず、識別にムラがあります。(ロイヤルブルー、ピジョンブラッドについてはAGL、ギュベリンなどが各々の判定基準を設定しています。)
ジェダイスピネルは前述のヴィンセント氏のレポートにより注目を浴び、アジアの中でも特に中国市場で人気を呼ぶようになったため、いち早い評価基準の制定が望まれていました。
そして現在、AIGSでは市場におけるジェダイスピネルの評価を一律にするために品質基準を制定しました。
AIGSによるジェダイスピネルの品質基準

AIGS Jedi spinel colour reference. Photo © AIGS
前項で解説したジェダイスピネルの特徴と被る点もありますが、AIGSルールでジェダイ認定されるスピネルは以下を満たすものです。
- 彩度が中~高程度のもの
- 赤、赤紫、レッドピンク、オレンジレッドの均一な色合い(茶、黒系のトーンがない)
- アイクリーンのクラリティー、強い輝きとテリを持つ
- ミャンマーの鉱山由来
- 中~高程度の赤色蛍光を持つ
- いかなるトリートメントも施していない
- プロポーション、カットが優れている
これらの多角的な評価は、ジェダイスピネルを共同で命名したヴィンセント、ホウ両氏による概念を汲んだAIGSのルールと言えます。
AIGSのような評価を下しているところはあまりありませんが、今後ピジョンブラッド等と同じく、各鑑別機関が独自の色範囲や基準を設けるのか?それともAIGSによる中国マーケット向けの鑑別として終わるのか、今後の流れは要チェックです。(AIGSは上海にも第二拠点となるラボを2020年にオープンしています。)
なおスイスのジェムラボラトリーGFCO(※2)ではジェダイスピネルと思しき石には、ジェダイレッド(JEDI RED)などのカラー判定を行っているようです。
(※2)スイスのベルン州トラムランに拠点を置く研究所であり2013年に設立。ラボとして10万以上の宝石を鑑定。
ジェダイスピネルの価値と今後の動向
ジェダイスピネルの市場価値が高まっている原因として挙げられるのが、ミャンマー産であっても鉄の含有が非常に低く、強いネオンピンクの色相を持つ石はミャンマーのMan sin/Namya鉱山でしか見つかっていないこと。
そして採掘される場合は非常に小さな結晶として見つかるため、ジェダイ認定されたスピネルであっても1カラット当たりの値段が高騰してしまう訳ですね。
現状ジェダイスピネルがどの程度ミャンマーで産出されているのかは未知数ですが、特にNamya産の石はその中でも伝説的な美しさと希少性を誇ります。ただし現在ジェダイスピネルとして流通する殆どの石は、Man sin産だと考えられます。
パライバトルマリンのように銅含有のナイジェリア、モザンビーク産もパライバ認定が可能になったように、飽和度の高いピンク色、鉄の含有が低く高い蛍光を示す他産地の石もジェダイ認定されるのか?今後の動向が非常に興味深い宝石と言えましょう。
まとめ

- 2000年代初期以降ミャンマーで採掘されるネオンピンクのスピネル
- ダークトーン、つまりくすみ、黒みがない高彩度の色彩をスターウォーズのジェダイとして形容
- 2021年AIGSで評価項目が発表
- スタンダードな評価基準がなく曖昧な評価が下される傾向がある
- 中国マーケットで特に人気が高い
ジェダイの騎士はダークサイド、つまり銀河の支配者に立ち向かう勇者。そんな崇高な名前を冠しているジェダイスピネルは、日本でもなかなか見かけることのない希少なスピネルの一つです。
AIGSルールによると色範囲やクロム・鉄の含有量による蛍光性の強さ、インクルージョンの少なさ、カットなど包括的な項目を満たさなければ、通常ジェダイ判定はされません。
現時点でAIGSの評価が定まったものの、ジェダイスピネルの絶対数が少なく、評価を下す鑑別機関でも取り扱いにムラがあります。そのため小売り側、消費者サイドであってもなかなか手が出しにくい宝石と言わざるを得ません。
今後の動向については市場の動きを見て要観察といったところですが、難しい話しを抜きにしてもネオンピンク、アイクリーンのスピネルは手に取るものを魅了する力があるようです。
ライトセーバーを思わすジェダイスピネル…、宝飾業界だけでなくファンタジー映画ファンの心も掴みそうな可能性を感じさせる宝石です。
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