
2024年のツーソンGJXショーでは、ターコイズ、赤珊瑚、その他の宝石を組み込んだ印象的なシルバー ジュエリーに注目が集まりました。また、エルメスでは2003年頃からトゥアレグ族に製作を依頼したシリーズを発表しています。
世界には長い歴史と確かな技法を持ち、今も愛される民族ジュエリーがあります。知れば知るほど奥が深い世界の民族ジュエリーから、今回は「ネイティブアメリカンジュエリー」と「トゥアレグ族のジュエリー」ついてお伝えします。
ネイティブアメリカンジュエリー
アメリカ先住民であるネイティブアメリカンが製作したジュエリーを「ネイティブアメリカンジュエリー」または「インディアンジュエリー」といいます。(日本では「インディアンジュエリー」が定着していますが、アメリカでは「ネイティブアメリカンジュエリー」と呼ぶ場合が多いようです。)
ネイティブアメリカンはジュエリーを身に着けることで階級や個性を表現しました。持ち運びできるジュエリーは部族間の交易にも役立ち、装飾品であると同時に経済的価値を示すものでした。
歴史
最古のネイティブアメリカンジュエリーは紀元前1万年以上前に作られた、骨が装飾されたイヤリングだと考えられています。紀元前8千年頃には貝殻や石のビーズでペンダントを製作し始め、長い年月をかけて技術が進化し金属やターコイズを使うようになりました。ネイティブアメリカンはターコイズを「神の石」として崇め、雨乞いや狩りの成功を祈る儀式に必ず使っています。
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ネイティブアメリカンのジュエリーに銀細工が取り入れられたのは1850年代、ナバホ族のアツィディ・サニがメキシコ人銀細工師のファンアテナに技術を教わったことが始まりです。1864年にはインディアン戦争が勃発。アメリカ政府はナバホ族が住む土地を強制退去させ4年間監視下に置きましたが、その間もナバホ族は収容先で銀細工の技術を仲間に広めました。
解放後ネイティブアメリカンジュエリーの銀細工技法はナバホ族からズニ族へ、ズニ族からホピ族、そしてサント・ドミンゴ族へと伝承されました。1900年代のゴールドラッシュによりアメリカ西南部の交通網が発達したことで、ネイティブアメリカンジュエリーは大衆化を果たしました。
特徴
ネイティブアメリカンジュエリーは独特な技法を用いた銀細工とターコイズなどの天然石を組み合わせ、動物・自然・神話をモチーフとしていることが特徴です。デザインや技法は部族により特徴がありますが、シルバーと天然石という組み合わせは共通しています。
ネイティブアメリカンジュエリーの技術やデザインは「ナバホ族」「ホピ族」の大きく二つに分かれます。それぞれの特徴をご説明します。
ナバホ族のネイティブアメリカンジュエリー
ネイティブアメリカンジュエリーの起源であるナバホ族は、アメリカ・アリゾナ州からニューメキシコ州にまたがるフォー・コナーズ砂漠地帯に保留地を領有する部族です。
大胆なデザインが特徴で、代表的なジュエリーに「コンチョ」と呼ばれる飾りボタンや、かぼちゃの花を意味し、子孫繁栄や豊作を祈る「スカッシュブロッサムネックレス」があります。ナバホ族のジュエリーの魅力の一つに、銀板に鏨(たがね)で模様を作り打ち付ける「スタンプワーク」があります。元々は行先をスタンプで示したり、目標や成功へ導くという意味が込められていました。
近年ではコンテンポラリー作品も多く、各イベントで多数の受賞に輝いています。
ホピ族のネイティブアメリカンジュエリー
ホピ族はアリゾナ州に保留地を領有し、周囲をナバホ族の保留地に囲まれています。ホピ族は農耕部族だったため、太陽・精霊・熊・亀など自然崇拝を表すモチーフが多いのが特徴です。
銀板を二枚重ねて上の板に絵を描き、のこぎりで模様を浮き立たせる「オーバーレイ技法」と、銀板に天然石をはめ込み模様を作る「インレイ技法」を得意としています。
ネイティブアメリカンジュエリー作家「パタニア家」
2024年冬のツーソンGJXショーでは、4代に渡りネイティブアメリカンジュエリー製作に携わる「パタニア・ジュエリー」の作品に注目が集まりました。
イタリア出身のフランク・パタニアはネイティブアメリカンではありませんが、ネイティブアメリカンジュエリーに多大な影響を与えた人物です。銀細工職人育成にも力を入れ、フランク・ジュニア(子)、サム(孫)、マルコ(ひ孫)のほかにも、ジョー・キンタナ、ジュリアン・ロバト、ルイス・ロメイら、著名な作家を育てました。
トゥアレグ族のジュエリー
トゥアレグ族(Touareg)は、アフリカ大陸サハラ砂漠西部のベルベル人系(北アフリカ先住民)遊牧民です。青いターバンと民族衣装を着用することから「青の民」と呼ばれ、シルバーのジュエリーを身に着けています。トゥアレグ族の歴史とジュエリーについてお伝えします。
歴史
トゥアレグ族にとってジュエリーは、交易に向かうキャラバンのお守りでした。キャラバンとは、ラクダに荷物を積み砂漠を行く商人の一団で、トゥアレグ族のキャラバンはマリ共和国の都市タウデニの塩鉱から半年ごとに移動します。
中世のサハラ砂漠は隊商を襲撃されるような土地であったため、トゥアレグ族は銀を用いて武器を作る風習がありました。そのような背景があり、トゥアレグ族のジュエリーは戦に勝利するためのおまじないであり、道に迷わないための魔除けであったと考えられています。
彫られている模様にはそれぞれ意味があり、家系ごとに伝承された模様が彫られたものは、父から子へと受け継がれます。
特徴
金を忌み嫌うトゥアレグ族のジュエリーは銀製で「トゥアレグシルバー」と呼ばれています。一般的な銀の純度はスターリングシルバーと呼ばれるシルバー925ですが、トゥアレグシルバーは純銀に近く、白く輝くことが特徴です。
細やかな手彫りの銀装飾を伝統工芸とし、伝統的な柄をひとつひとつ手彫りで入れるので、同じものがありません。柄のモチーフは旅の安全を祈るラッキーモチーフの馬蹄、クロス、星、幾何学模様などです。
エルメスが惚れたトゥアレグ族の彫金技術
1997年にエルメスが発表したシリーズ「アフリカ(L’Afrique)」は、エルメスモチーフのトゥアレグシルバーです。エルメスの工房ではなく、トゥアレグ族が製作している点が大きな特徴です。鏨(たがね)を使った精巧な彫りは、クラフトマンシップを大切にしているエルメスらしいですね。
模様のひとつひとつがトゥアレグ族のインスピレーションで生まれたという「Ano H toareg」のバングル、ネックレス、バックルなどは、発売から20年以上経った今でも入手困難になるほど根強い人気が続いています。
まとめ
- ネイティブアメリカンジュエリーはアメリカの先住民のジュエリー
- 銀細工とターコイズなどの天然石を組み合わせ、自然や神話をモチーフとしている
- スタンプワークのナバホ族、オーバーレイ・インレイ技法のホピ族に分かれる
- トゥアレグとはサハラ砂漠遊牧民であるトゥアレグ族のジュエリー
- キャラバンのお守りやおまじないの意味があり子孫に受け継ぐ風習があった
- 純銀に近い素材はトゥアレグシルバーと呼ばれ、馬蹄や幾何学模様がモチーフ
- エルメスがトゥアレグ族に製作を依頼したシリーズは根強い人気がある
民族ジュエリーというと一部の愛好者のものかと思われるかもしれませんが、性別、年齢を問わず身に着けられる民族ジュエリーはBEAMS(ビームス)やハリウッドランチマーケットでも販売されています。
流行り廃りがないのはきっと長い年月をかけて伝承し、洗練され、進化してきたジュエリーだからなのでしょう。
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