
水彩絵の具のパレットに見られるような、赤、紫、黄色そして無色透明、ガーネットは元来全ての色相が揃う色彩豊かな宝石と言われてきました。そう、ブルー以外は……。
燃える石炭と形容されたガーネットに青い色相があるのか否かは、長年議論の的になってきましたが、今回はそんな謎めくブルーガーネットの存在の有無を考察していきます。
「ベキリーブルーガーネット」とは?
ベキリーブルーガーネット(0.469ct)・セミオーダー | BIZOUX – ビズー公式 ![]()
昨今「ベキリーブルーガーネット(Bekily Blue Garnet)」と呼ばれるマダガスカル産のガーネットが宝石愛好家の間で人気を集めています。ベキリーブルーガーネットは1990年後半にマダガスカルのべキリー地区で発掘された、カラーチェンジ効果を持つガーネットです。白熱光で赤紫~紫、自然光や蛍光灯で青~青緑のカラーチェンジを見せ、その美しさはアレキサンドライトを思わせます。
青に変色する特色から「ベキリーブルーガーネット=青いガーネット」と紹介されることがありますが、果たしてこの変色効果を理由に青色判定をしていいものなのでしょうか?また、GIAによって変色効果がほぼ認められないブルーガーネットの存在も報告され、そんな事実がガーネット界隈の「幻の青」神話を揺るがしているのです。
ガーネットの基礎データ
| 化学組成 | A3B2Si3O12(※1) |
|---|---|
| 結晶系 | 等軸晶系 |
| モース硬度 | 6.5~7.5 |
| 劈開 | なし |
| 比重 | 3.78~4.15 |
| 屈折率 | 1.740~1.888 |
| 複屈折率 | なし |
| 多色性 | なし |
(※1)A = Fe, Ca, Mn, Mg、B = Al, Fe, Ti, Crなど、A、Bに入る化学元素は鉱物によって異なります。
ガーネットのカラーチェンジ

ガーネットはひとつの宝石名ではなく、化学組成が近い類質同像(※2)の総称であり、大別するとアルミニウム、カルシウムの2系統に分かれます。そして化学組成の違い、固溶体(※3)を含めると、非常に多彩な近縁種のガーネットが存在しているのです。
(※2)結晶構造は同じで、組成の一部が置き換わっているもの。
(※3)2種以上の物質が溶け合い、均一になっているもの。

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柘榴(ざくろ)色はパイロープ、柑橘系カラーはスペサルタイト、グリーン系はツァボライトやデマントイドなど様々ですが、パイロープとスペサルタイトの固溶体などは変色効果を見せることで知られます。(全てではありません)
もちろん全てが青色に変色する訳ではなく、赤⇔オレンジ、赤⇔赤茶色、青紫⇔ピンク、紫⇔ピンクなど様々なカラーチェンジが見られ、見る角度や主観によっても目に映るトーンは異なります。これらは光源の違いによって反射する光が異なることで、視覚として捉える色が違って見えることに起因します。このカラーチェンジがブルーガーネットを理解する鍵となります。
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カラーチェンジを青いガーネットと見なせるのか?

プリズムジュエルス カラーチェンジガーネット ハートシェイプ 2pc 5.19ct
ベキリーブルーガーネットは白熱光で赤紫~紫、自然光や蛍光灯で青~青緑を見せ、その変色の類似性から「アレキサンドライトタイプ」とも呼ばれます。パイロープとスペサルタイトがほぼ等量で混ざった固溶体であり、カラーチェンジはマンガン、バナジウム、鉄の含有濃度とバランスの違いが因子になることが分かっています。
タンザニア、ケニア、マダガスカルなどから産出しますが、特にマダガスカルのベキリー鉱山の石は美しい変色効果を持ち、ベキリーブルーガーネットと呼ばれるようになりました。一般的にこのアレキタイプの石が青系のガーネットとして認識されるようになります。ただしブルーガーネットと言うよりは、カラーチェンジタイプとしてソーティングにも記載されます。
新発見の変色効果が薄いブルーガーネットとは?
GIAではガーネットについて「リッチなパレットカラーに富み、いくつかのブルーの石すらも見られる」と言及しています。
さてここでは2017年にGIAより報告されている、強い青味を見せる新しいタイプのガーネットの発見について解説!この新タイプのガーネットがブルーガーネットの存在をより興味深いものにしてくれるはず!?
変色無しのガーネットこそ青色認定に!?

「Blue-Green Pyrope-Spessartine Garnet with High Vanadium」GEM NEWS INTERNATIONAL
GIAから発表されたレポートによると、タンザニアのウンバ・リバー・バレー(Umba River Vallery)にて採掘されたブルーグリーン系統のガーネットの市場流入が報告されています。アレキサンドライトタイプのカラーチェンジガーネットと同様に、パイロープ、スペサルタイトガーネットの固溶体であり、ティールブルーの美しいサファイアのような色合いが特徴です。
ベキリーブルーガーネットが見せる赤紫⇔青~青緑の変色とは異なる、青⇔緑、青緑色の非常に限局された変色がゆえ、GIAでは「ユニークなブルーグリーンガーネット」と形容しています。ブルーグリーン、つまり青みがかった緑ということで、厳密に言えば完全な青ではありません。しかし変色の色相変化の小ささがゆえ、このレアな例は議論が続くブルーガーネットにとって大きな足掛かりになる一歩と言えるでしょう。
異なる変色効果!その理由はバナジウムにあり
ベキリーブルーガーネット同様にパイロープ、スペサルタイトガーネットの固溶体でありながら、なぜ異なる変色効果を見せるのか?その理由は、通常のパイロープ、スペサルタイトガーネット固溶体のカラーチェンジが含有するよりも、非常に高いバナジウム濃度を誇るからです。
バナジウムが高濃度で含有すると、赤、オレンジ、黄色帯のスペクトルの大部分を吸収する為、白熱光下でより赤味が少ない青色を呈するようになるのです。なおこの化学組成のガーネットはこのレポート以前には報告されていません。GIAではどんな光源の下でも青系色相を維持することから、若干の変色こそあれど本質的にブルーグリーン系ガーネットと認定していると考えられます。
まとめ
- 90年代、赤紫⇔青~青緑色を呈するカラーチェンジガーネット「ベキリーブルーガーネット」が発掘
- 2017年、青⇔緑、青緑色のカラーチェンジガーネットがGIAにより報告される
- 青⇔緑、青緑色の変色効果は高濃度のバナジウムが要因
- ブルーガーネットは「幻」から「レア」として認知されつつある
- 各鑑別機関によっては「変色がある以上ブルーガーネットではなくカラーチェンジガーネットである」という意見もあり
幻のブルーガーネット、コナン・ドイルによる「青いガーネット」が出版された頃には、まだその存在自体が議論になることはありませんでした。
時代は流れ90年代に赤紫⇔青~青緑色を呈するカラーチェンジガーネットが登場し、アレキサンドライトを思わす美しさがゆえ市場を圧巻。そして2017年、高バナジウム含有のカラーチェンジガーネットが少量であるものの登場したことにより、幻であった青いガーネットがレアなブルーガーネットとして認知されるようになるのです。
もちろん各鑑別機関、識者によっては「変色がある以上カラーチェンジガーネットであり、純粋なブルーとは言えない」という意見もあり現段階での明言はしにくい為、その判断は架空の探偵に任せるのがベストかもしれませんね。
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