
ルビーとガーネット
アクアマリンとブルートパーズ
タンザナイトとアイオライト
このように、宝石の世界では「色が似ている」「共通点が多い」「名前が似ている」などの理由で、混同しやすい宝石が多くあります。今回は混同されやすい宝石を色べつに10パターンを取り上げました。それぞれの宝石がどのような特徴を持ち、どう見分けるかを解説します。宝石に対する目と知識の“解像度”を、もう一段階上げてみませんか?
【赤】ルビー/レッドスピネル/ルベライト/ロードライトガーネット
この4つの宝石は見た目だけでは判別が難しいほどよく似ていますが、それぞれ微妙に異なる赤色や光沢、内部構造の特徴を持っています。
実際にルビーとスピネルが間違えられた有名なエピソードがあります。イギリスの王冠についた「黒太子のルビー」は、14世紀から18世紀までずっとルビーだと思われていました。後世に鑑別技術が発達したことで、実はレッドスピネルだったことが判明したのです。
それぞれの特徴
- ルビー
色石の最高峰、透明度が高く明るい赤色が最高品質 - レッドスピネル
シャープな輝きが魅力、長い間ルビーと混同されていた - ルベライト
トルマリンの一種、鮮やかなピンク〜赤色が多くルビーのような真赤は希少 - ロードライトガーネット
ワインレッド〜パープルまでの色相がある
見分け方
- ルビー蛍光反応が強いものが多い
- レッドスピネル透明度が高くわずかに紫がかった赤が特徴
- ルベライトインクルージョンが見られることが多く、二色性がある(トルマリンの特徴)
- ロードライトガーネットガーネット特有のガラス光沢がある
【透明】ダイヤモンド/ホワイトトパーズ/ホワイトサファイア
サファイアといえば青色のイメージが強いですが、無色のサファイアも存在します。ホワイトサファイアは18世紀~19世紀ごろ、ダイヤモンドの代わりとして貴族の間で人気がありました。ホワイトトパーズも同様にダイヤモンドよりも安価で手に入るため、ダイヤモンドの代用品として使われることがあります。同じ無色の宝石ですがそれぞれ硬度や輝きが異なり、特にダイヤモンド他の2つの石と比べると圧倒的に強い輝きをもちます。
それぞれの特徴
- ダイヤモンド
強い輝きが特徴、地球で最も硬い鉱物(モース硬度10) - ホワイトサファイア
ギラギラしない柔らかな輝き、硬さはダイヤモンドよりも低い(モース硬度9) - ホワイトトパーズ
控えめな輝きと透明感、硬さはホワイトサファイアよりも低い(モース硬度8)
見分け方
- ダイヤモンド光の分散による虹色の強い輝き(ファイア)がある
- ホワイトサファイア少し曇った透明感がある、ダイヤモンドと比べると輝きや光の反射は控えめ
- ホワイトトパーズホワイトサファイアよりさらに落ち着いた輝きでガラスのような光沢感がある、大きいサイズでも安価
【緑】エメラルド/グリーントルマリン
エメラルドとグリーントルマリンは、どちらも鮮やかな緑色で見た目がよく似ています。一般的にエメラルドはインクルージョン(内包物)が多く、グリーントルマリンはすっきりとした透明感があるのが特徴です。エメラルドもグリーントルマリンも「鮮やかなで暗すぎない色調」で「純粋な緑色から青みがかった緑」が最も高く評価されます。
エメラルドは紀元前からの長い歴史があり、緑色の宝石の代表的な存在です。2カラット以上の大きさは希少で、世界的な需要も高いため非常に高値で取引されます。一方グリーントルマリンはエメラルドよりも安価で大きいサイズが手に入るため、エメラルドの代用品とされることがあります。
それぞれの特徴
- エメラルド
緑の宝石の最高峰、色が濃く鮮やかなものが最高品質 - グリーントルマリン
黄緑~青緑までの色相がある、エメラルドよりも安価
見分け方
- エメラルド多色性を持つ、内包物(インクルージョン)が多くやや濁りがち
- グリーントルマリン透明感が高くクリアな印象、多色性をみせる石が多い
【黄・オレンジ】トパーズ/シトリン
トパーズとシトリンはどちらも黄色からオレンジ色の色合いを持ち、見分けがつきにくい宝石です。中世にはトパーズが人気を集めており、シトリンがその代用品とされていた歴史があります。一方シトリンはアメシストから生まれた水晶で、和名を「黄水晶」といいます。
トパーズはフッ素を含む「Fタイプ」と水酸基を含む「OHタイプ」の2つに分けられます。「Fタイプ」は青・緑・褐色・無色、OHタイプは赤・ピンク・オレンジをしており、OHタイプのトパーズはインペリアルトパーズと呼ばれます。赤みをおびたオレンジ色のインペリアルトパーズは希少で高値で取引されます。
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それぞれの特徴
- トパーズ
茶・青・緑・黄・橙・赤・ピンク・紫など豊富な色相、硬度が高く強い輝きを持つ - シトリン
色相は黄・オレンジ・オレンジがかった赤
見分け方
- トパーズ高い屈折率を持ち、光沢にガラスのような鋭さがある
- シトリンやわらかい輝きで色合いはトパーズより淡いものが多い
【黄緑】ペリドット/グリーン系ガーネット
ペリドットとグリーン系ガーネットは、美しい若草色が特徴で一見よく似ています。しかしペリドットは「複屈折」があるのに対し、グリーン系ガーネットは「単屈折」で透明感があり、それぞれ輝き方が異なります。
複数あるグリーン系ガーネットの中でも、特に希少性が高く人気なのがデマントイドガーネットとツァボライトです。
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それぞれの特徴
- ペリドット
複屈折率が高く強くきらめく、ファセットが二重に見える(ダブリング) - デマイントガーネット
高い屈折率と分散度を持つためダイヤモンドのように虹色に輝く(ファイア)
ホーステールインクルージョン(馬の尻尾状の内包物)を持つものもある - ツァボライト
単屈折で輝きに重厚感がある
見分け方
- ペリドットイエローグリーンからオリーブグリーンの黄みがかった色相
- デマイントガーネット深い緑から明るい黄緑の色相
- ツァボライト黄みが少ない明るい緑から深い緑色
【水色】アクアマリン/ブルートパーズ
どちらも透明感のある水色の宝石で涼しげで上品な印象があります。アクアマリンは柔らかな色味と落ち着いた輝き、ブルートパーズは鮮やかな色と強いきらめきが特徴です。
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それぞれの特徴
- アクアマリン
エメラルドと同じベリルという鉱物、青~青緑色の海を思わせる色相を持つ - ブルートパーズ
濃淡によりスカイブルー・スイスブルー・ロンドンブルーの3つに分けられる、天然のものは希少で無色のトパーズに放射線処理を施し着色したものが多い
見分け方
- アクアマリンやわらかく澄んだ水色
- ブルートパーズより青みが強く色が均一なことが多い
- スカイブルートパーズ晴れた空のような淡いブルー
- スイスブルートパーズビビッドで明るく濃いブルー
- ロンドンブルートパーズグレーがかった深みのあるブルー
【紫】アメジスト/パープルスピネル/スギライト
この3つの宝石は濃淡やトーンは異なりますが、数少ない紫の色味を持つ宝石です。落ち着いた印象や神秘的な雰囲気でどの宝石も人気があります。紫の宝石は色がよく似ており間違いやすいため、特徴を把握しておくと安心です。
それぞれの特徴
- アメジスト
クォーツの一種で色は明るい紫〜濃い紫、透明度が高くガラス光沢がある - パープルスピネル
色相は赤紫〜青紫まで幅広い、内包物が少ない、希少価値が高いものが多い - スギライト
紫が主だがマーブル状で黒やピンクを含むこともある、マーブル模様や縞が見られることが多い
見分け方
- アメジストわずかに赤みを帯びた紫
- スピネルインクルージョンが少なく鮮やかで均一な色調、透明度が高くクリアな輝き
- スギライト不透明または半透明である
【黒】ブラックオニキス/ジェット/ブラックスピネル
この3つの宝石はいずれも深い黒色を持つ宝石で、見た目がよく似ていますが成分・性質・質感が大きく異なります。共通点は「光沢があり鮮やかに見える」「ビーズやカボッションにカットされる」などです。
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それぞれの特徴
- ブラックオニキス
カルセドニーの一種、なめらかなガラス光沢がありつるっとした手触り - ジェット
木の化石でできた有機宝石、少しマットな樹脂光沢で温かみがある - ブラックスピネル
硬く強いガラス光沢がありカット面がキラキラ輝く
見分け方
- オニキスやわらかい光沢のある深い黒色、縞模様があるものもある、ジェットとブラックスピネルの中間の重さ
- ジェット木の化石でできているので最も重量が軽い、こすると静電気が発生する
- ブラックスピネル3つの中で最も重量が重く冷たい、不透明~わずかに半透明、艶やかな輝き
【青紫】タンザナイト/アイオライト
どちらも美しい青紫色の宝石で、「見る角度によって色が変わる(多色性)」という性質が共通しているため混同されがちです。1967年に初めてタンザナイトが発見された際に、アイオライトではないかと考た専門家もいたほどです。
青色系の宝石は何らかの処理が施されていることがほとんどで、美しい青紫色を呈するタンザナイトも高確率で加熱処理が施されています。(加熱処理が価格に影響することはありません)一方、アイオライトは高温に耐えられないため、青色を強めるための加熱処理を行うことができません。ほとんど処理がなされない点はアイオライトのメリットと言えます。
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それぞれの特徴
- タンザナイト
多色性により赤・青紫・黄・褐色が見える、透明度が高く輝きが強い - アイオライト
多色性により無色・黄・青灰色・褐色が見える、輝きは控えめ、世界中で産出されるため比較的安価
見分け方
- タンザナイトほとんどの石は加熱処理で黄・褐色がかった多色性の色を押さえているため、青色とすみれ色が見える
- アイオライト見る角度によってグレーや黄色が見える
【名前の類似】ジルコン/キュービックジルコニア
ジルコンとキュービックジルコニアは名前が似ているため混同されがちですが、ジルコンは天然石、キュービックジルコニアは人工石です。ジルコンは地球で最初に形成された宝石だと考えられており、ダイヤモンドの代用品として古くから用いられてきた歴史があります。一方、キュービックジルコニアは人工的に大量生産できるため、宝石としての価値はありません。
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それぞれの特徴
- ジルコン
ダイヤモンドのような輝きと虹色のファイヤーを持つ、カラーバリエーションが豊富 - キュービックジルコニア
ダイヤモンドに似た輝きを持つ人工石、「人工ダイヤモンド」とも呼ばれるが全くの別物
見分け方
- ジルコンファセット(研磨面)の面と面が交わる角部分が二重に見える「ダブリング現象」がみられる
- キュービックジルコニア人工物のため不自然なほど美しい、大きいサイズで安価
(天然では貴重な1.0カラットほどのサイズ感で5万円以下、など)
まとめ
見た目や名前が似ていても、それぞれの宝石には固有の魅力と特徴があります。これらの見分け方や背景を知ることで、宝石への理解がより深まったのではないでしょうか。宝石との出会いは一期一会です。ぜひ、ひとつひとつの宝石が持つ物語に耳を傾け、あなただけのお気に入りの宝石を見つけてみてくださいね。
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